お知らせ
社会科学古典資料センター国際ワークショップ「Rare Materials, digitization, and the role of curators(貴重資料・デジタル化・キュレータの役割)」を開催しました
来年度から社会科学古典資料センターが開始する「西洋古典資料の保存に関する拠点およびネットワーク形成事業」のプレイベントとして、2016年2月12日(金)、附属図書館会議室で国際ワークショップを開催しました。当日は、オックスフォード大学ボドリアン図書館からピップ・ウィルコックス氏をお招きし、モノとしての資料の収集・保存・管理を担うキュレータ(学芸員・図書館員)は、デジタル化とどのような関係を築くかが議論されました。来場者は46名でした。
まずピップ氏から、‘The element they lived in: special collections, scholarship, and scale’と題する講演がありました。デジタル資料をテキスト化したり、メタデータや注釈を付与することで、それらのデータの検索・抽出・リンクが可能になり、そこから新たな発見や価値が生まれることが述べられ、“Digital is more than digitization”(デジタルには、デジタル化以上の意味がある)という考え方が紹介されました。
続いて、本学社会科学古典資料センター床井啓太郎専門助手が「一橋大学社会科学古典資料センターにおける西洋古典資料の保存と修復:これまでと今後の展望」と題する講演を行いました。資料のデジタル化と同時に、原本の全点調査・保存修復を長期的視野で継続してきた同センターの歩みについて報告があり、今後は、全国の研究機関が所蔵する西洋古典資料の保存状況調査、実務研修による人材育成に踏み出し、保存修復の全国的なネットワークを構築していくという計画が説明されました。
講演会を通じて2人の講演者は、「キュレータは、形のある資料とデジタル資料の両者に対し責任がある」、「それぞれの長所を生かし短所を補う形で扱うべきである」という見解で一致しました。例えば、形のある資料は経年劣化を免れないが、紙の触感・大きさ・においはデジタルで複製できない固有の性質であること。また、デジタルは万能の複製物ではないが、コンピュータが処理できるデータを追加することで、新たな研究視角を与えてくれるといった点が指摘されました。
アンケートには、「デジタルの長所と短所が理解できた」、「古典資料センターの過去・現在・未来の取り組みを概観できて興味深かった」といった意見が寄せられました。
会場の様子
ピップ・ウィルコックス氏(オックスフォード大学ボドリアン図書館)
床井啓太郎専門助手(一橋大学社会科学古典資料センター)