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2012年度第2回一橋大学政策フォーラム・一橋大学グローバルCOE公開討論会「経済学は役に立つのか?」を開催しました

 2012年12月14日(金)、如水会館スターホールにて、120人以上の聴衆を前に、一橋大学グローバルCOEプログラム「社会科学の高度統計・実証分析拠点構築」では「経済学は役に立つのか?」というテーマで公開討論会を開催しました。主催者の問題意識として、1990年代以後相次ぐ経済危機、金融危機に対して、経済学は適切な対応ができなかったのではないかということがあり、この問題に対する説明、議論、意見交換が行われました。

 本討論会では、始めに鈴村興太郎氏(一橋大学名誉教授・学士院会員)が「経済制度の合理的設計と社会的選択」というトピックで、経済制度の選択を民主的に導くことの難しさと、それを克服するための経済学の道具立ての改善について、歴史的、哲学的、理論的な側面から解説しました。

 澤田康幸氏(東京大学大学院経済学研究科教授)は「開発経済学と自然災害」ということで、開発経済学でも、自然災害などの不確実性に対する備えとして各種の保険制度が考案され、実施されていることなどを紹介しました。

 川口大司氏(一橋大学大学院経済学研究科准教授)は「実証経済学における因果関係の発見」というトピックで、2007年の最低賃金法改正によって、最低賃金の引き上げ率は地域によって異なることから、若年者雇用に与える効果をあたかも実験したかのように分析することが可能になったことを提示しました。

 西沢保氏(一橋大学経済研究所教授)は「経済思想史上の経済学者」ということで、戦前期に活躍した福田徳三を取り上げ、関東大震災からの復興において、福田は詳細な失業調査を行い、住宅立法改正案や失業防止策、職業紹介事業改正案の策定に貢献したことを紹介しました。

 伊藤秀史氏(一橋大学大学院商学研究科教授)は商学研究科・商学部での経済学教育に関して「ビジネススクール・エコノミクス」の現状と課題を解説し、経済学は社会学や心理学と同様に、人間の行動の選択を分析するための基礎となる学問と位置付けられると論じました。

 北村行伸氏(一橋大学経済研究所教授)は現在の金融危機に際し、欧米の中央銀行は19世紀のイギリスにおける金融危機や世界大恐慌を教訓として、金融の量的緩和を行っていることを例にとり歴史の教訓について論じ、同じ歴史は繰り返さないとすれば、時々によって変化する条件や制約の違いを見極めながらパターンを考えることが重要だということを論及しました。

 パネルディスカッションでは、各パネリストに対して、議論を敷衍するような質問が出され、それに対して時間のある限り応答しました。経済学は地道な研究を積み重ねて、人間の生活に役立てるように研鑽を積んでいくしかないということで合意を得て終了しました。

タイトル 開会挨拶 全体討議

※当日の様子を、次のプログラム一覧から動画でご覧になることができます。

プログラム
開会挨拶 深尾 京司(一橋大学経済研究所教授・一橋大学グローバルCOEプログラム「社会科学の高度統計・実証分析拠点構築」拠点リーダー) 映像
報告:
『経済制度の合理的設計と社会的選択』
鈴村 興太郎(早稲田大学政治経済学術院特任教授・一橋大学名誉教授) 映像
報告:
『開発経済学と自然災害』
澤田 康幸(東京大学大学院経済学研究科教授) 映像
報告:
『実証経済学における因果関係の発見』
川口 大司(一橋大学大学院経済学研究科准教授) 映像
報告:
『経済思想史上の経済学者』
西沢 保(一橋大学経済研究所教授) 映像
報告:
『ビジネススクール・エコノミクス』
伊藤 秀史(一橋大学大学院商学研究科教授) 映像
報告:
『経済政策における歴史の教訓』
北村 行伸 (一橋大学経済研究所教授・一橋大学グローバルCOEプログラム「社会科学の高度統計・実証分析拠点構築」拠点副リーダー) 映像
パネルディスカッション:
『経済学の可能性と課題:教育と研究の間』
パネリスト:川口 大司 西沢 保 伊藤 秀史
コーデネーター:北村 行伸
映像
閉会挨拶 北村 行伸

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