一橋教員の本
データビジュアライゼーションのためのデザイン原則 : 日常的に扱うデータを効果的に伝わる情報に変える (Compass Data Science)
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Desireé Abbott著 ; 長尾高弘訳 ; 山辺真幸監訳 |
監訳者コメント
情報可視化の技術は、科学的世界観や統計とともに発展してきました。1970年代から80年代にかけて、コンピュータ上での情報処理が進化し、1990年代以降にはCG技術を駆使した情報可視化が科学・工学・医療など多くの分野で試みられ、その一部は現代でもよく目にするチャートとして普及しています。その後、2000年代にはWebの普及とデータ量の爆発的増加を背景に、情報可視化はより一般的なツールとして社会に広がり始めました。
このような背景のなかで、ただデータを扱うスキルだけでなく、それを誰かに「伝える」ために構造を組み立て、意味を抽出し、視覚的に設計する能力がますます求められています。どれほどAIが進化しても、優秀なデータサイエンティストやエンジニアがいたとしても、データの意味を正しく理解し最後に判断を下すのは人間であり可視化はその重要な手段であるからです。デザインの力をもってデータに命を吹き込み、他者の行動や認識に橋をかけることのできる人材は、社会にとって重要でありながら、決して十分に足りているとはいえません。
現場では、「正しい情報を伝えているはずなのに伝わらない」「よく見えるが意味がつかめない」といったギャップが頻繁に生じています。こうしたギャップを埋めるには、データとデザインを分けて繋ぎ合わせるのではなく、それらを一体のものとして実践する視点が欠かせません。
本書は、まさにそうした統合的な学びの入り口として有効な一冊です。特定のツールや技術に依存することなく、どのように構造を整理し、誰のために、何をどう伝えるのかといった問いを丁寧に導いてくれます。視覚のデザインのプロであれば当然知っているべき、色彩理論、タイポグラフィ、視覚認識のメカニズムについてティップスやノウハウではない深いレベルまで掘り下げています。また、操作が可能な可視化をデザインするためのインタラクションデザインの原則について具体例を踏まえた知識を得られます。
