一橋教員の本

入門講義 会計&ファイナンス

入門講義 会計&ファイナンス

中野誠編著;髙須悠介, 調勇二, 吉永裕登著
中央経済社 2025年9月刊行
ISBN : 9784502546419

刊行時編著者所属:
中野誠(経営管理研究科)
刊行時著者所属:
髙須悠介(経営管理研究科)

編著者コメント

 本書は会計とファイナンスに「橋を架ける」ための入門書です。従来、大学教育において、両者は別建ての科目として設定されてきました。それぞれの内容が広範囲にわたり、深堀りすべき内容も豊富にあるためです。会計でいえば、入門的な簿記からはじめて、会計学入門、中級財務会計、上級財務会計、財務諸表分析まで、通年科目でも5科目以上の濃密な内容があります。ファイナンスにも、企業財務、ポートフォリオ理論、アセット・プライシング、リスク管理など、深掘り可能な理論体系が存在します。


 一方、企業実務においては、FP&A (Financial Planning & Analysis)という潮流が注目を集めています。一般に、日本語では「財務計画・分析」等と呼ばれます。企業の業績の計測・管理、財務計画の立案、将来予測、予算編成等を指す比較的広範な領域です。そこでは、財務会計、管理会計、ファイナンスの領域複合的な知識・理解が求められています。


 加えて、2023年3月以降、東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請しています。持続的な企業価値向上のためには、実務家サイドでも、会計とファイナンスの融合的な知識が求められます。


 もちろん、それぞれの理論体系を一つずつ地道に学習するのが王道です。それでこそ、その道の専門家として企業価値向上に貢献することができます。しかし、そこまで専門性追求が必要ではない方、時間制約のある方も少なくないでしょう。そこで、本書では以下のような構成を基にして、一冊の中で会計・ファイナンスの理解を促進する計画です。



第1部 財務諸表
第2部 財務諸表分析
第3部 企業価値評価
第4部 コーポレート・ファイナンス



 財務諸表の基礎的な理解からスタートし(第1部)、財務諸表分析を学ぶことで、企業のファンダメンタルズの分析をすることが可能になります(第2部)。実際の企業の例を用いながら、楽しく学ぶことができるでしょう。その後、さらに応用的な企業価値評価へと進みます(第3部)。従来、企業価値評価に関する知識が求められるのは、証券アナリスト、証券会社の投資銀行部門などの専門職に限定されてきました。しかし近年では、事業会社勤務のビジネス・パーソンからの需要も高まっています。そのため、企業価値評価のエッセンスと具体的な手法を丁寧に解説しています。最後の第4部では、企業の投資意思決定、資金調達・資本構成、株主還元の意思決定など、コーポレート・ファイナンスの基礎的な理論枠組みを学びます。M&AやPBRといった最新論点についても解説します。


 大学教育においては、2年生以上の講義あるいは演習でテキスト指定が可能かもしれません。MBAや企業研修の場合、「会計&ファイナンス」ということで、1冊でエッセンスを学ぶことが可能となることでしょう。



Share On