一橋教員の本
CSR・ESGへの法からの多面的接近 : 企業と環境・社会
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野田博著 |
著者コメント
本書の各章は、筆者がこの15年余りに公表した論稿を基礎に、CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・企業統治)に関するさまざまなテーマを扱っています。筆者にとってのこのテーマの出発点は、いわゆるソフトローの研究の一環としてCSRの規範性(法による強制がなくてもある規範に企業が拘束感を感じて従うことがあるか、あるとすればそれにはどのような要因が働いているか等)への関心にありました。その後、CSRまたはESG要素を意識した企業活動を拡大・支援するためのさまざまな規制措置が講じられてきました。企業による自発的取組みとその開示の要求という手法やいわゆるグリーン調達のように、調達契約(政府調達を含む)にCSRに関する義務を定めるといった契約を通じる方策等から発展して、今日では、基準をつくり、その基準に従って情報開示を求める強行規定と監査(外部保証)の導入、グリーンウォッシングの弊害への対応、人権デューデリジェンスの実施と開示・報告を義務づけるといった手法など、多岐にわたる展開がみられます。また、そのようなESG重視の潮流のなかで、ESG要素の考慮に関する取締役の義務・責任をめぐる議論やESG投資と受託者責任をめぐる議論にも深化がみられるようになっています。本書は、以上のような規制の動向とそれに関連して生じる諸論点を、ある程度体系立てて取り上げ、規制の意図に反して生じうる負の部分にも目を配りながら検討しており、CSR・ESG、あるいは株主以外のステークホルダーの利益への配慮と法、とりわけ会社法との関係をめぐる問題に関心がある方々はもちろん、広く企業活動に影響を及ぼす多様な規制手法一般に関心を有する方々にとっても、参考になるところがあれば幸いです。