一橋教員の本
デレク・パーフィット:哲学者が愛した哲学者
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デイヴィッド・エドモンズ ; 森村進, 森村たまき訳 ; 上, 下 |
訳者コメント
原書が昨年出版されたばかりの本書は、『理由と人格』と『重要なことについて(全3巻)』(ともに勁草書房から私の邦訳あり)の著者として哲学界で畏敬されていたにもかかわらず世間的にはほとんど知られていなかった、「ほとんどの人が知らない最も高名な哲学者」デレク・パーフィット(1942-2017)の伝記です。
学者生活のすべてをオックスフォードで過ごしたパーフィットは「奇人哲学者」を絵に描いたような人物だったため、彼の生涯と生活を多くのエピソードを交えながら生き生きと描いた本書は、現代英語圏の哲学に親しんでいる人はむろんのこと、いくらかでも学者生活に関心のある読者には興味深く読めるに違いありません。パーフィットの教えを受けたことがある著者が膨大な資料とインタビューを基にして書いた本書は、刊行直後から多くの称賛を受け、すでに現代哲学者の伝記の中でも最も優れたものの一つとしての地位を確立しています。
本書の翻訳は、原書出版前から計画していた、私にとっていろいろな意味でやりがいのある仕事でした。
さらにこの訳書はパーフィットと何度か親しく話をする機会があった訳者(の片方)が回想文を寄稿したため、一層読みごたえのある本になっています。
なお私が以前共訳したニコラ・レイシーの『法哲学者H.L.A.ハートの生涯 上・下』(岩波書店)と併読すれば、第二次世界大戦直後から今世紀初頭までのオックスフォード大学の内部事情が実によくわかります。
最後になりますが、下巻に誤記を二つ発見したのでここに訂正しておきます。
・224ページ左から2行目 ガウディ ⇒ グアルディ
・231ページ左から7行目 二〇一二年 ⇒ 二〇一七年(森村進)