一橋教員の本
「社会」の底には何があるか : 底の抜けた国で<私>を生きるために(講談社選書メチエ812)
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菊谷和宏著 |
著者コメント
本書『「社会」の底には何があるか:底の抜けた国で〈私〉を生きるために』(2024)は、前二作『「社会」の誕生:トクヴィル、デュルケーム、ベルクソンの社会思想史』(2011)および『「社会」(コンヴィヴィアリテ)のない国、日本:ドレフュス事件・大逆事件と荷風の悲嘆』(2015)と合わせて「社会三部作」を成すものです(いずれも講談社刊)。
これら一連の著作を貫いているのは――実のところ社会学者にもよく分かっていない、少なくとも見解の一致を見ていない――「『社会』とは結局何なのか」という問いなのですが、本書は三部作の最終巻として、この問いに一定の答えを提示しています。
著者としては、記すべき内容はすべて本文中に平易に記述したつもりですので、解説したり付け加えたりしたいことはほぼありません。あえて言うとすれば「印象的な表紙のデザインは内容を動的に象徴している」ということでしょうか。また、出版社のサイトに掲載されているレビューhttps://news.kodansha.co.jp/10413には本書の特徴がよく捉えられていますから、一読されると本書の内容をうまくイメージしてもらえると思います。
本書は学術書ではありますが、一般読者の方、とりわけ次代を担う若い方々に届くよう記述を工夫しました。本書を読まれた方々が、私が先人から受け取った知的な遺産を、それぞれの場で、さまざまな形で引き継いでくれることを心から願っています。