資源エネルギー政策論の重要性
わが国に特有の産業・エネルギー事情
高度に発達した産業を基軸とした経済体制を有しながらも、天然資源の乏しいわが国においては、価格及び量の面で安定したエネルギーと資源の供給を確保することはこれまでも重要な政策課題の一つでした。そのため、資源エネルギー政策は、工学系の資源工学講座を拠点として、これまでもわが国の高等教育において系統的に研究が進められていました。
持続可能性の課題と新たなエネルギーリスク
近年地球温暖化の問題に代表されるような地球レベルでの環境問題の深刻化、日本海の汚染、中国の大気汚染物質の日本への伝播等に見られるように東アジアレベルでの環境問題の深刻化は、持続的発展可能性を視野においた資源・エネルギー政策を発展させる必要性を認識させるものでした。さらに、中国やインド等の新興国の台頭は、資源・エネルギー問題に対して、資源の枯渇の危機、資源確保をめぐる新たな国際紛争の発生等、新たな資源・エネルギー面のリスク要因を形成しつつあり、わが国がこれに適切に対処することは喫緊の課題になっています。
社会科学的観点の重要性―総合性・国際性
資源・エネルギー面のリスクに対処する上では、天然資源の供給・需要の動向分析、エネルギー利用効率等に関する自然科学的な分析は不可欠であるものの、工学系・環境科学環境政策系の研究機関における研究の多くは、石油・石炭、天然ガス、電力等の領域ごとに行われ、総合性に欠ける傾向にありました。かつ、資源・エネルギー問題のグローバル化を踏まえるならば、欠落しがちであった世界市場・グローバルな視点をこれまでの分析にビルト・インする必要があります。