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創立150周年記念/2025年度ホームカミングデー

2025年10月2日 掲載

2025年5月10日(土)、一橋大学創立150周年記念/2025年度ホームカミングデーが国立キャンパスで開催された。当日の天気は雨のち曇り。曇天ではあったが、ラビットスライダーやバルーンアート、キッチンカーの出店など屋外イベントも予定通り実施され、盛況のうちに終了した。兼松講堂でのプログラムには、卒業生、在学生、ならびにそのご家族等が来場。YouTubeによるライブ配信も実施され、現地に来場できなかった国内外の関係者からも多数の視聴があり、世代や地域を越えて、一橋大学の150年にわたる歩みと今後の展望を共有する良い機会となった。

画像:中野 聡

中野 聡
一橋大学長

画像:大月 康弘

大月 康弘
一橋大学理事・副学長

画像:水野 良樹氏

水野 良樹氏
いきものがかり、HIROBA

画像:西野 和美

西野 和美
一橋大学副学長

画像:髙橋 伸彰氏

髙橋 伸彰氏
株式会社フィル・カンパニー取締役会長(一橋大学商学部卒)

画像:片岡 慶一郎氏

片岡 慶一郎氏
株式会社Jizoku代表取締役(一橋大学経済学部卒)

画像:細谷 海氏

細谷 海氏
株式会社VoiceCast代表取締役(一橋大学商学部在籍)

画像:竹内 昭広氏

竹内 昭広氏
株式会社VoiceCast取締役(一橋大学大学院経営管理研究科在籍)

開会挨拶

兼松講堂でのプログラムは、中野聡学長による開会挨拶から始まった。国立のキャンパスについて、卒業生・教職員・学生が協力して緑地整備や植樹支援に取り組む「一橋植樹会」の活動が紹介され、代々の卒業生によって受け継がれてきた一橋大学の精神とコミュニティの連続性について、時代のイデオロギーに左右されず、現実と真摯に向き合う志あるリアリストの集まりであることを強調した。続いて、ホームカミングデーについて、現在、そして未来の一橋コミュニティを共有し、つながり直す機会になるとし、「緑豊かなキャンパスへいつでも遊びに来てほしい」と話した。さらに、国境を越えた卒業生コミュニティの広がりにも言及し、卒業生は本学の価値の証左であると称えた。

画像:当日の様子01

創立150周年記念講演『国立キャンパス事始め』

続いて、大月康弘理事・副学長による記念講演『国立キャンパス事始め』が行われた。1923年の関東大震災を契機として千代田区から国立市へのキャンパス移転が決定された経緯や、東京商科大学・初代学長の佐野善作氏と箱根土地株式会社の堤康次郎氏による学園都市構想の実現について語り、10万坪の大学用地と100万坪の住宅地開発によって形成された国立キャンパスは、理想的な学問空間として設計されたことを強調した。

また、兼松講堂をはじめとするロマネスク様式の建築群や図書館の整備、さらには東西両キャンパスの歴史的経緯についても言及し、歴史資料や写真を用いて、当時のキャンパス造成の様子や学生生活の一端が紹介されると、会場の関心を集めた。最後に、先人たちの構想と努力によって築かれた国立キャンパスの学び舎を、現代に生きる自分たちが未来へつないでいく責任について述べ、講演を締めくくった。

画像:当日の様子02

“いきものがかり”水野良樹氏による特別講演企画

ソングライターであり、“いきものがかり”のリーダーとして知られる水野良樹氏(2006年社会学部卒)による特別講演が行われた。水野氏は、自身の大学時代の体験や、デビューに至るまでの葛藤、そして音楽家として社会とどのように関わってきたかについて語った。

水野氏はまず、2024年度の入学式で中野学長が、自身のデビュー曲「SAKURA」の歌詞を引用したことへの感謝を述べると、「SAKURA」の歌詞は、地元である神奈川県の桜並木とともに、一橋大学前の大学通りの桜もイメージして作ったことを明かし、国立市の街と大学への深い思い入れについて語った。

さらに、自身の音楽活動が「自己実現」や「自己表現」にとどまらず、聴き手の人生と結びつくことに意義があると話し、曲を聴いた人が自身の思い出や生活の風景と結びつけてくれることが、自身にとっての価値であると述べた。

画像:当日の様子03

講演の後半では、音楽という表現手段にとどまらず、「自分の手を離れて誰かのものになること」によって、初めて何かが社会に還元されるのではないか、という考えを述べた。自分を出発点としながらも、「誰のものでもなく、誰かのものでもある」という状態になることで、初めて社会に還元されていくものだという視点は、卒業生一人ひとりの社会貢献の可能性を示すものであった。

最後に、一橋大学が創立150周年を迎えたことへの祝意と、自身が学んだ場所への感謝の言葉を述べるとともに、水野氏自身の学生時代を振り返りつつ、一橋大学で得た経験が今の音楽活動につながっていることを強調し、「一橋大学から始まった多くの挑戦が、これからも社会を変えていくのだと思う。その力強い風の中に、私もほんの少し、歌という形で加わることができればと願っている」と締めくくった。

『一橋大学発ベンチャー企業座談会』

画像:当日の様子04

座談会は、西野和美副学長の司会で行われた。登壇者は、一橋大学発ベンチャーの称号を授与された片岡慶一郎氏(株式会社Jizoku代表取締役/一橋大学経済学部卒)、一橋大学発学生ベンチャーの称号を授与された細谷海氏(株式会社VoiceCast代表取締役/一橋大学商学部在籍)、竹内昭広氏(株式会社VoiceCast取締役/一橋大学大学院経営管理研究科在籍)と、本学卒業生であり先輩起業家の髙橋伸彰氏(株式会社フィル・カンパニー取締役会長/一橋大学商学部卒)。加えて、個人事務所の代表取締役を務める水野良樹氏(“いきものがかり”/株式会社MOAI代表取締役)も急遽ゲスト参加した。

冒頭、西野副学長より、本座談会の趣旨と登壇者の紹介を兼ねた挨拶があった。一橋大学は2024年12月より一橋大学発ベンチャー/一橋大学発学生ベンチャー称号授与制度を開始し、スタートアップ支援の取組を本格的に推進している。その第1号として称号を授与された2社の代表者が今回の登壇者であるとの紹介があった。

最初に紹介されたのは、株式会社Jizoku代表取締役の片岡氏。農業の多面的機能に着目し、CO2吸収や生物多様性保全といった環境貢献を経済的価値に転換することで、農業と環境保全を両立させるビジネスモデルを展開している。同社は農業分野におけるカーボンクレジット創出プロジェクトに取り組んでおり、現在はチームの13名のうち、学内出身者が半数を占める。国内外の研究者と連携し、持続可能な農業モデルの確立を目指している。

次に、株式会社VoiceCastの細谷氏と共同創業者の竹内氏が紹介された。同社はデジタル絵本や3DCGアニメなど、次世代IP(知的財産)の創出と配信を通じて、新たなコンテンツの形を提示している。AIを活用した脚本・コンテの一括生成ツールを開発するなど、技術とクリエイティビティを融合した取組が注目を集めている。また、竹内氏が開発者の一人として携わった一橋生のための時間割アプリ「バシコマ」について、在学生の9割以上が利用しているという実績も紹介され、学生起業の成功例として会場の関心を集めた。

上場経験を持つ先輩起業家として登壇した株式会社フィル・カンパニー取締役会長の髙橋氏は、都市の未活用空間であるコインパーキング上部に空中店舗を展開するという独自のビジネスモデルで会社を成長させ、上場を果たした。現在は、新たにマイクロファイナンス事業を展開するベンチャーを率いている。髙橋氏は、自身の学生時代の起業経験を振り返り、「資金調達に苦労し、事業失敗を経験したが、それも大切な学びだった」と語った。企業の成功には何よりも「仲間」が重要であり、共存共栄の姿勢が社会的信頼や機会を生むとも述べた。

画像:当日の様子05

水野氏は、学生のうちに起業すると、社会の基礎的な経験を積むのが難しいのではないかと問いかけ、登壇者が基礎的なビジネス経験をどのように積んできたのかについて強い関心を示した。

たとえば、社会経験が乏しい学生起業家にとって、名刺交換や商談の進め方といった基礎的なビジネスマナーの習得も一つの壁となる。登壇した学生起業家たちは、それらを一つひとつ現場で学び、実践を重ねてきたと話した。

座談会では、学生時代の経験がその後の起業にいかに結びついているかを示すと同時に、起業は特別なものではなく、誰もが挑戦できる「人生のチャレンジ」であるという共通理解が形成された。

こうして一橋大学発ベンチャー企業座談会は、学生起業家、若手起業家、そして先輩起業家がそれぞれの立場から語り合い、新たな挑戦の可能性とコミュニティの広がりを共有する機会となった。

学生パフォーマンス

一橋大学体育会應援部による校旗掲揚と応援歌「東都の流れ」、一橋大学津田塾大学合唱団ユマニテによる一橋大学校歌「武蔵野深き」の合唱が披露された。最後に、一橋大学体育会應援部によるエールが行われ、校旗降納をもって兼松講堂でのプログラムを終了した。

画像:当日の様子06