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一橋大学経済研究所が共同利用・共同研究拠点として最高評価獲得

2022年7月1日 掲載

2021年10月、一橋大学経済研究所は、共同利用・共同研究拠点「日本および世界経済の高度実証分析」の第3期(2016年4月1日~2022年3月31日)中期目標期間における期末評価として、2018年度の中間評価に続いて最高のS評価を獲得した。期末評価でのS評価は初。国立大学の共同利用・共同研究拠点は全部で79あり、うち人文・社会科学系は8拠点。その中でS評価は東京大学史料編纂所と一橋大学経済研究所の2拠点のみであるが、中間・期末ともS評価は経済研究所だけである。また、新たに2022年度から2027年度までの期間の認定を受けた。

共同利用・共同研究拠点の意義と目的

画像:植杉教授

経済研究所 植杉 威一郎 教授

我が国の学術研究の発展のためには、個々の大学の枠を超えて大型の研究設備や大量の資料・データなどを全国の研究者が共同で利用し、研究を行うことが有効である。こうした考え方のもと、文部科学省は2008年7月、学校教育法施行規則を改正し、国公私立大学を通じたシステムとして、共同利用・共同研究拠点の認定制度を設けた。認定された拠点に対しては期ごとに中間および期末評価が行われる。

経済研究所は、2010年度から「日本および世界経済の高度実証分析」の拠点として認定された。政府統計ミクロデータの利用環境の整備を中心に、データ・アーカイブ全般の整備・拡充と統計分析手法の開発等に裏打ちされた、産官学及び国際機関との幅広い連携に基づき、国際的な共同研究拠点を形成する。これにより、日本および世界経済の高度実証分析を進め、得られる確かな"知"をもって高精度の制度設計・政策提言に資することを目的としている。

拠点としての経済研究所の強み

「歴史統計の金字塔」と称される日本の長期経済統計の完成後はアジア長期経済統計の刊行に取り組んでいる。日本産業生産性、都道府県別産業生産性データベースには年間6万件以上の閲覧があり、日本経済の生産性を論じる上での基礎統計としての地位を確立している。

マーケティングデータや金融取引データ、年金に関する行政情報なども収集・蓄積し、実証分析を推進してきた。たとえば、2014年には全国約4000の小売店舗で日々収集されるPOSデータに基づく「SRI一橋大学消費者購買指数」の公表を開始し、リアルタイムで物価や消費者動向情報を提供している。

加えて、対外的な研究の結節点としても機能している。毎年度国内外の外部研究者が研究代表者として実施するプロジェクト研究では、海外研究者が代表の採択研究課題の割合が4割に上っている。2016年度まで日本学術振興会「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」を実施し、若手研究者の長期在外研究とネットワーク形成を支援してきた。コロナ禍の下で、海外大学院に在籍する日本出身大学院生に拠点プロジェクトに参加してもらうことで共同研究の場を提供する、というユニークな取り組みも行うことができた。

他の社会科学系研究所と比較した特長

経済学などの社会科学分野における他の共同利用・共同研究拠点としては、京都大学経済研究所、大阪大学社会経済研究所、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターがある。それ以外の大学附置研究所には神戸大学経済経営研究所がある。それぞれに特色を有しているが、一橋大学経済研究所は、次の3点において強みを持つ。

  1. 長期経済統計、産業・地域生産性統計、消費者購買指数などの独自に作成した統計・指標のデータベースを有しつつ、政府統計ミクロデータの利用に関するインフラを提供するなど、網羅的な統計データ利用環境を提供している。
  2. 統計分析や経済理論を専門とする研究者を擁し、実証分析とのシナジーの発揮を図っている。
  3. 共同利用・共同研究拠点の公募型プロジェクト研究において、海外研究者を代表者とするものの比率が高く、それ以外にも多数の国際共同研究プロジェクトが進行中であるなど、国際的な研究交流の進展度合いが高い。参加者に対する支援としても、ゲストハウスや研究室、資料室・社会科学統計情報研究センター資料室が利用可能であり、海外研究者にも対応する助手や事務補佐員も配置されて十分な体制が整っている。

今後も進める拠点としての活動

以上のような特色が評価され、多くの研究機関・学会や内外における著名・気鋭の研究者から拠点としての経済研究所の活動を支持する声が寄せられたことも、認定に際しての大きな力になった。

今回の文部科学省からの評価コメントは、次のとおりである。

「日本及び世界経済の高度実証分析の中核的拠点として、卓越した研究業績を上げ、国際交流協定の締結によるネットワークの拡大を図るとともに、国内外の経済統計のデータベースの更なる充実を図り、経済史を越えて幅広い社会科学分野における共同利用に供して、マーケティングや精度の高い制度設計及び政策提言等に生かしていることは非常に高く評価できる。今後は、企業データの活用による企業連携や社会・地域の活性化への貢献等の幅広い拠点活動の一層の見える化に向け、情報発信及び取組の更なる強化が期待される」

今回の評価と認定に対し、共同利用・共同研究拠点認定の取りまとめを担当した植杉威一郎教授は、「当研究所の研究者やスタッフにとって、非常に大きな励みとなった。経済研究所では引き続き、所期の目的達成のために環境整備や研究の充実に努めていく」と語る。