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大河ドラマでは描かれなかった、渋沢栄一と一橋大学との深い絆

2022年3月25日 掲載

一橋大学附属図書館では、2021年度(令和3年度)の企画展示として、『渋沢栄一と一橋大学:学園史にたどるその足跡』を開催している。図書館内展示は2021年11月4日(木)〜12月24日(金)の期間で行われ、すでに終了しているが、Web展示は"終期未定"として、現在も展示を継続中だ(2021年12月15日時点)。今回HQでは、企画展示に携わった図書館職員の方々3名(一橋大学附属図書館 堀越香織古典資料係長、林哲也学園史資料係員、矢澤昌江学園史資料担当専門員)に取材。企画展示に至る経緯や、展示品の特徴、開催後の反響などについてお話を伺った。なお、企画展示に関する最新の情報は、一橋大学附属図書館の公式HPを参照してほしい。

Web展示・館内展示の同時開催という新しい試み

図書館の企画展示は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止を余儀なくされた2020年度を除き、毎年開催している。2019年度以前の直近3年では、『一橋祭いまむかし』(2019年度)、『プロジェクトF:世紀のコレクションを獲得せよ! ~フランクリン文庫入手からセンター設立まで~』(2018年度)、『批判・反骨・ユーモア:新聞・雑誌でめぐる風刺画の世界』(2017年度)というように、図書館の所蔵資料を活用しながらさまざまな企画展示を行ってきた。
企画展示に関する準備は、図書館職員の中から企画展示ワーキンググループ(WG)を組織し、基本的に前年度末の3月にスタート。企画が決定し次第、11月の展示に向けて作業を進めていくという流れだ。
2021年度の開催に向けた議論では、WG内でさまざまなアイデアが検討されたが、最終的には渋沢栄一を軸にした展示を行うことに決まった。
「大河ドラマ『青天を衝け』の主人公であり、2024年度の上半期に一新される1万円札にも肖像が使われる渋沢栄一と本学との関係にフォーカスすることに決まりました」(林氏)

画像:堀越 香織氏

「本学には、渋沢栄一との関係を示す様々な資料があります。図書館所蔵の資料はもちろん、長年渋沢栄一についての情報を発信してきた如水会々報などの資料にも当たり、できるだけ貴重な資料の展示に力を入れています」(堀越氏)
ただし、2021年度も引き続き感染防止対策が必要となったため、学外の人は基本的に入場できない。そこで今回は「Web展示」の同時開催に至った。

初の公開となる渋沢栄一直筆の掛け軸および書簡コレクション

上記の事情で展示品に関する詳しい内容はWeb展示でも確認できるが、今回の企画展示で初めて公開された所蔵品をピックアップしよう。
まず、渋沢栄一直筆の掛け軸が挙げられる。美術品や骨董品にそれほど興味を示さなかったとされる渋沢だが、「書」にはとても強い思い入れを持っていた。そんな渋沢が「靑淵」という雅号で書いた白居易の七言律詩「池上竹下作」の一部分が、掛け軸として展示されている。これは長年図書館において所蔵されていたものだ。

画像:林哲 也氏

また、1923(大正12)年に、東京商科大学(当時)の第3代学長を務めた上田貞次郎教授に宛てた学園史資料室所蔵の書簡コレクションも、今回の企画展示で初披露となった。
「本学ならではの所蔵品を公開する絶好の機会ですから、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思い、展示を決定しました」(林氏)
「実は他にも学内に渋沢栄一が揮毫した扁額があるのですが、運び出しや展示室での展示が困難であることから、今回は展示品の候補から外しました。みなさまにご覧いただけず残念でした」(矢澤氏)

館内展示の期間中は学生も訪れ、アンケートに「とても勉強になった」との感想を書き残していったという。またWeb展示を見た方からも「大変興味深い内容で楽しんだ」との感想が寄せられたそうだ。

画像:渋沢栄一が上田貞次郎教授に宛てた書簡

渋沢栄一が上田貞次郎教授に宛てた書簡

画像:渋沢栄一揮毫の扁額(如水会創立100周年絵葉書より)

渋沢栄一揮毫の扁額( 如水会創立100周年絵葉書より )

画像:渋沢栄一書

渋沢栄一書

一橋大学の教育プログラムや授業に息づく渋沢栄一の思い

冒頭で触れたように、館内展示は終了したがWeb展示は引き続き行われている。大河ドラマで渋沢栄一の存在を知った人にとっては、ドラマでは描かれなかった側面について、Webを通して多くの情報をインプットする機会になるだろう。WGのメンバーも、企画展示の準備を通して、渋沢栄一と一橋大学の関係について多くのことを発見したと語る。
「開学前後だけではありません。本学の存亡の危機を何度も救い、80歳を過ぎてからも式典などには代理を立てて必ず祝辞を届けられたそうです。一橋大学のために粉骨砕身の思いで貢献してくださった方であることがよく分かりました」(堀越氏)
近代日本資本主義の父・渋沢栄一の思いは、一橋大学グローバル・リーダーズ・プログラムや渋沢スカラープログラム、「渋沢栄一と『一橋大学の歴史』」や「経営哲学」などの授業の中にも息づいている。その詳細は、Web展示及びリンク先から世界中の人が閲覧できるので、この機会にサイトへのアクセスをお勧めする。

画像:矢澤 昌江

「館内展示とは違い、Web展示では2次元の画像になりますが、希少性が損なわれるわけではありません。Webの特性を生かして記事の全文をご覧いただけるものもありますので、ぜひこの機会にチェックしていただきたいです」(矢澤氏)