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グローバル時代の一橋法学ーその実績と未来への提言 国際シンポジウム 「如水会百周年記念インテリジェントホール」竣工記念

2015年秋号vol.48 掲載

日本人学生に加え留学生の育成にも多大な実績を残し、世界の法学界・法曹界に数多くの人材を輩出してきた一橋大学法学部・大学院法学研究科。中でも中国、台湾、韓国など東アジアの国・地域出身の留学生の多くが一橋法学の精神を受け継ぎ、現在は自国における重要な立場で活躍を続けている。今回のシンポジウムでは、グローバル時代の担い手となった7人の法学研究科OB・OGが母校で講演を行い、自らの実績を紹介するとともに、未来に向けた提言を行った。

蓼沼宏一学長

学長挨拶
蓼沼宏一学長

義本博司文部科学省審議官

祝辞
義本博司文部科学省審議官

岡田円治如水会理事・事務局長

祝辞
岡田円治如水会理事・事務局長

青木人志法学研究科長

趣旨説明
青木人志法学研究科長

李茂生国立台湾大学教授

李茂生
国立台湾大学教授

楊建順中国人民大学教授、中国行政法学会副会長

楊建順
中国人民大学教授、中国行政法学会副会長

張青華天達共和律師事務所主任弁護士

張青華
天達共和律師事務所主任弁護士

劉栄軍北京師範大学教授、中国民事訴訟法学会副会長

劉栄軍
北京師範大学教授、中国民事訴訟法学会副会長

杜怡静国立台北大学副教授

杜怡静
国立台北大学副教授

李京柱仁荷大学教授

李京柱
仁荷大学教授

徐熙錫釜山大学副教授

徐熙錫
釜山大学副教授

各国、各界で活躍する卒業生の提言から未来に向けた一橋法学の姿を探る

シンポジウム発表の様子

2015(平成27)年7月18日、「如水会百周年記念インテリジェントホール」のオープンを記念して開催されたシンポジウム「グローバル時代の一橋法学│その実績と未来への提言」。このシンポジウムは、かつて外国人留学生として一橋大学大学院法学研究科で学び、現在は母国の学界・実務界で活躍する卒業生を招き、それぞれの実績紹介とともに未来に向けての提言を行ってもらうという趣旨で開催された。また、このシンポジウムは、法学研究科が平成27年度に開始した「次世代の法学研究者・法学教員養成プロジェクト」のキックオフ企画でもあった。
1951(昭和26)年に一橋大学法学部が独立して64年を経る中で、法学部・法学研究科は順調に発展を遂げてきた。充実した教授陣の下で、多数の法学研究者が育ったのみならず、法律実務家としての実力を着実に身につけた優秀な卒業生たちが、法曹界における重要な役割を担うようになり、最高裁判所判事や検事総長など司法界の重鎮となった人材も輩出した。また、2004(平成16)年に開設された法科大学院(ロースクール)は高い司法試験合格率を誇り、累積合格率(修了生のうち最終的に司法試験に合格した学生の比率)は79.5%と、全法科大学院の中で最高の実績を残すに至っている。このことは、今日、数多くの一橋大学出身者が裁判官、検察官、弁護士として、幅広い分野での活躍を始めている証左にほかならない。
その一橋法学が現在直面しているのが、急激に進展する「グローバル化」の中で、法学部・法学研究科の研究や教育をいかに進展させるか、という課題である。新たな時代において、これからの一橋法学はどのようにあるべきか。
そこで、アジアを中心とした国・地域から卒業生を招き、国籍や世代を超えた彼らの講演を通して過去の実績を振り返り、そして一橋法学の未来に向けた役割と使命を再確認したい。そんな願いが、このシンポジウム開催に込められていたのである。

東アジアの法曹界で活躍する重鎮たちが実感する一橋大学で学ぶことの魅力

シンポジウムに招かれた講演者たちは、一橋大学で身につけた法律に関する学識を自国の法制度や法研究に活かすことで、それぞれ自国の法曹界で重鎮となった人物ばかりだ。自国の法整備に関わる、あるいは教育機関に属して学生たちへの法教育を担う中で、一橋法学の精神を伝えるだけではなく、学術面・ビジネス面での交流において大いなる力を発揮している。(講演者それぞれの肩書や実績は25ページを参照のこと)。
講演者たちの多くが、少人数体制で行われる一橋大学の懇切丁寧な教育スタイルが学生として感じた魅力だと語り、また卒業生を中心とした強固な人的ネットワークも他の大学にはない魅力であるという意見を聞くことができた。

シンポジウムの様子1-蓼沼学長

シンポジウムの様子2-義本科学省審議官

シンポジウムの様子3-岡田事務局長

シンポジウムの様子4-青木法学研究科長

東アジアのリーダーとしての役割と人材交流の積極化という提言

グローバル化への提言として多く聞かれたのが、人材交流をより活発化させるべきだというものだった。ビジネスの世界では特に、ボーダーレス化が進む状況で、法律に関する共通意識を持つことが重要だとする意見も聞かれたが、その意味合いにおいても人材交流は重要な要素だということが理解できる。また、一橋大学における留学生受け入れの体制をより強化することが必要だとする意見も出され、英語による授業の充実化など、法学専門授業のグローバル対応を進めることで、人材交流を促すべきだとする考えも聞かれた。
ある講演では、法学自体がローカルな学問であるがゆえにグローバル化をイメージしづらいという指摘もあった。その一方で、東アジアの国々には日本の法律を先行事例としながら自国の法律を発展させたいという姿勢があるのも確かなことだ。そうした現状を踏まえ、東アジアの中で、法学研究・教育に関する長い歴史を誇る一橋大学が東アジアをリードする研究・教育の拠点となり、人材交流の推進と、東アジアにおける研究・教育のリーダーとしての役割を担っていく。それこそが、グローバル時代を迎えた一橋法学のあるべき姿なのかもしれない。

質疑応答

質疑応答

名誉教授の方々

名誉教授の方々も列席された

国際シンポジウム グローバル時代の一橋法学─その実績と未来への提言

  • 主催:一橋大学大学院法学研究科
  • 日時:平成27年7月18日(土)13:00~17:10
  • 場所:如水会百周年記念インテリジェントホール(国立西キャンパス)
  • 学長挨拶
    • 蓼沼宏一 一橋大学長
  • 来賓祝辞
    • 義本博司氏 文部科学省高等教育局審議官
    • 岡田円治氏 一般社団法人如水会 理事・事務局長
  • 趣旨説明
    • 青木人志
    • 一橋大学大学院法学研究科長
  • 講演
    • 李茂生氏 国立台湾大学教授(一橋大学博士〈刑事法〉)
    • 楊建順氏 中国人民大学教授、中国行政法学会副会長(一橋大学博士〈行政法〉)
    • 張青華氏 天達共和律師事務所主任弁護士(一橋大学博士課程単位修得〈国際私法〉)
    • 劉栄軍氏 北京師範大学教授、中国民事訴訟法学会副会長(一橋大学博士〈民事訴訟法〉)
    • 杜怡静氏 国立台北大学副教授(一橋大学博士〈会社法〉)
    • 李京柱氏 仁荷大学教授(一橋大学博士〈憲法〉)
    • 徐熙錫氏 釜山大学副教授(一橋大学博士〈民法〉)
  • 質疑応答

(2015年10月 掲載)