新任者メッセージ
2025年4月1日 掲載
シェアドリーダーシップを通じて
学生の育成と研究環境の整備に尽力したい
黒住 英司(くろずみ えいじ)
経済学部長・経済学研究科長
このたび経済学研究科長・経済学部長という役職を拝命しましたが、私はカリスマ的なリーダーシップを発揮するタイプではありません。むしろ教員の皆さん一人ひとりと目標を共有し、お互いに範を示し合いながら発展していく、そんなシェアドリーダーシップが機能する研究科・学部にすることが理想です。
私が考えている目標は、論理的思考力を身につけた優秀な学生の育成、および研究環境の整備です。まず教育については、学生の課題発見・解決能力の基礎となる論理的思考力を鍛えるために、教員の皆さんには学部導入科目、学部基礎科目などでしっかり指導していただく。そして基礎体力を身につけた学生に対して、核となる専門性をゼミでの指導を通じて定着させてあげてほしいと考えています。
次に研究については、すでに個々の教員が多種多様な成果を上げていますが、案外お互いの研究を把握できていないという実態があります。そこでお互いの研究内容を知る場を提供し、融合を図ることでより良い研究成果につなげていきたいと考えています。研究内容にとどまらず委員会活動など学内の業務も共有し合い、全員で負担を平準化できればシェアドリーダーシップもさらに培われていくでしょう。
経済学研究科・経済学部の教員がコミュニケーションを深め、教育・研究の両面で発展していくために、さまざまな働きかけを行うことが私の使命です。(談)
「エートス」を維持しながらも
スムーズなトランスフォームを
中田 康彦(なかた やすひこ)
社会学部長・社会学研究科長
将来予測が困難とされる時代において、大学の未来、大学改革の未来もまた予測が難しくなっています。学問の進展と社会の要請の変化に対応し、大学も変化していく必要があります。
一方で、これまで引き継がれてきた「エートス」(気風、精神)を継承していくことも大切だと考えています。「〇〇らしさ」というのは形容しがたいもので、いわゆる「学風」なるものにこだわり過ぎてもよくないのですが、時代に流されるまま過去の蓄積を単純に否定・解体するのもよくないでしょう。
社会学部・社会学研究科にはいわゆる「学風」とは別に、研究員が互いの研究領域を超えて互いの仕事や人間性を理解し尊重しあうといった、ある種の「社会関係資本」が存在しています。これも一つの「エートス」ではないかと私は考えます。タイムパフォーマンスが重視され、学びの個別化が進む時代だからこそ、緩やかでしなやかなつながりをもった組織であり続けること。それこそが教育・研究上も組織運営上も求められるのではないでしょうか。現段階では具体的な施策・アイデアがあるわけではありませんが、そのために何ができるのかを考えていきたいと思います。
社会学部・社会学研究科でも世代交代が進みつつあります。とはいえそれは短期間で完成されるわけではありません。「エートス」を維持しつつもトランスフォームを支援し、次の世代にスムーズにバトンタッチできるよう努めていきます。(談)
研究科設立30周年に向け
小規模ながらも新しい試みを
中井 亜佐子(なかい あさこ)
言語社会研究科長
言語社会研究科(以下、言社研)は1996年に独立研究科として設立された比較的新しい研究科です。一橋大学の中では唯一「人文学の教育と研究」を任務に掲げています。2021年には設立25周年を迎え、記念書籍『〈言語社会〉を想像する』(中井亜佐子、小岩信治、小泉順也編著/小鳥遊書房)を出版しました。2026年には30周年を迎えます。
言社研の特徴としては、伝統的な文学研究科とは異なり、専門分野の垣根が低く、さまざまな専門性を持つ教員と学生が自由に交流できることが挙げられます。その中から独自性のある新たな学問分野を立ちあげてきました。たとえば、本学独自の理論・方法論で発展してきた社会言語学です。文学研究では、台湾文学、在日朝鮮人文学、英語・フランス語によるポストコロニアル文学といった独自性のある研究を行ってきました。
言社研の強みとしては他にも、アクチュアルな問題意識に根ざした思想・哲学研究、学問と社会をつなぐ学芸員資格取得プログラムや日本語教育学位取得プログラムなどがあります。近年は新たに科学史、翻訳論といった分野の新任教員を迎え、小規模ながらも特色のある研究科を目指しています。
今年10月頃(予定)に開催する創立150周年記念シンポジウムでは、言社研のこれまでの「伝統」と、より新しい分野とを組み合わせて、言社研の多様性と人文学の可能性を参加者の皆さんにも感じていただければ幸いです。(談)
「一橋モデル」の維持・発展を図る
玉井 利幸(たまい としゆき)
法科大学院長
2023年に司法試験の在学中受験が始まるなど、近年、法曹養成制度は大きく変化しました。本学でも制度の変化に対応するため、カリキュラムの見直しなどの改革を進めてきました。在学中受験では準備期間が短くならざるをえず、在学生は苦戦するかとも思われましたが、予想を覆す非常に優れた結果を残しています。特に法曹コース出身者の実績には目を見張るばかりです。
制度が大きく変わっても高い実績を残せているのは、これまでの在学生・修了生・教員の相互作用により培われてきた、「一橋モデル」とでもいうべき学修・教育環境によるところが大きいと思います。授業で教員から学ぶことももちろん重要なのですが、それだけではありません。入試で既修者コースにも面接試験を課しているためでしょう、多様なバックグラウンドを持つ優秀な学生が集まっているだけでなく、協調的な雰囲気の中、それぞれの特徴を活かし、相互に学び合いながら成長できる環境が生み出されていると思います。修了後も、学修アドバイザーやキャリアアドバイザー、非常勤講師など、さまざまな形で、惜しみなく在学生の支援に携わる修了生が非常に多く、頭の下がる思いで一杯です。本学が高い実績を残せているのも、「人」に恵まれたからこそであると痛感しています。
今後も、これまでに育まれてきた「一橋モデル」を維持・発展させながら、司法試験合格後を見据えた教育を行い、様々な分野で活躍できる修了生を送り出し、次の世代に繋いでいく。それが私に課された役割だと考えています。(談)