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新任者メッセージ

2020年9月1日 掲載

"想像力"と"創造力"で世界の地平を切り拓く、諸学を総合した実学の府に

大月康弘氏

大月 康弘

理事・副学長(総務、人事、研究、社会連携、広報担当)

2019年9月に一橋大学は7大学目の指定国立大学法人に指定されました。国立大学改革の推進役となることが期待されているだけに、大変重要な時期を迎えていると考えています。そうした中で、社会連携や総務、人事、研究、広報を担当する副学長に就任することになりました。ここで抱負を述べさせていただきます。

本学運営の柱は、「財政」と「研究力」にあると考えています。まず、国立大学改革により厳しさを増す財政に関しては、国の配分予算だけに頼るのではなく、各部局で知恵を出し、汗を流して収益を獲得するマインドチェンジが必要と思います。2020年3月末まで図書館長を務めておりましたが、館員の優れた創造力に触れ、各部局にこうした職員が在籍しているであろうことを確信しています。ぜひ、新たな魅力創出に向けて教員、職員を問わずにチャレンジしていただきたいと思います。そうした日々の工夫を、同窓会組織如水会とのネットワークをはじめに、社会と連携をすることに努めたいと考えています。

財政基盤の上で、第一義として「研究」の充実を図りたいと考えます。魅力ある高度な研究が行われるようになれば、自ずと学生が活性化し、教育に好影響を及ぼすと考えるからです。その点で、本学には国内外で活躍するハイレベルな研究者が多数在籍しています。課題としては、学部や部局の垣根を越え、イシュー・オリエンテッドな問題解決能力を備えた"価値創造の殿堂"をつくることにあると考えます。私は、一橋大学社会科学高等研究院の「医療政策・経済研究センター」の立ち上げに参与しましたが、こうした研究センターを多数設け、財源も自ら獲得するといった動きを促進させることが必要だと考えています。

また、本学におよそ70年ぶりとなる新学部「ソーシャル・データサイエンス学部・研究科(仮称)」が設けられることになりました。AIが高度に進展し、社会の各方面に取り込まれつつある今、データサイエンスが社会科学に及ぼす影響は極めて大きなものがあります。とはいえ、データサイエンスはあくまでも"道具"であり、これを用いて何を行うかが本学部、また全学的に問われることになるでしょう。そこで、データサイエンスのスキルを鍛え、これらを活用して問題を発見し、より良い"解"を導くためのセンスを磨く。いわば、"学知を鍛え、才知を磨く"ことが重要であるということです。

私は一橋大学が"想像力"と"創造力"で世界の地平を切り拓く、諸学を総合した実学の府になることを願っています。ご協力のほど、お願い申し上げます。(談)

「学問の楽しさを学生に伝える」という最も重要な使命を果たす

青木人志氏

青木 人志

理事・副学長(教育担当)

教育担当の副学長に就任いたしました、青木人志です。これまでは、歴史的な経緯もあり教育・学生担当という広範な領域を1人の副学長が担ってきましたが、このたび教育担当と学生担当を分けることになりました。教育担当の私は、教育環境の整備やカリキュラム、入学試験などを担当します。教育内容については、まずは各学部・研究科がそれぞれの専門領域において責任をもつのが当然のことですので、私は学部や研究科の枠を超えた全学共通の課題の調整を主に管轄することになります。
まずは、指定国立大学法人への指定を受けるにあたり約束した重要な二つの課題に取り組みます。

一つは、本学が取り組んできた「教育のグローバル化」をいっそう進展させることです。英語による授業の拡充と多言語・多文化理解の推進、SIGMA(世界の社会科学系9大学連携)をはじめとする国内外のネットワークの教育面での活用などの施策を推進します。

もう一つは、「ソーシャル・データサイエンス学部・研究科(仮称)」の新設です。1951年に現在の4学部体制となって以来約70年ぶりに新学部を創設するという一大事業です。本学が強みを持っている社会科学諸分野と、数学、統計学、情報工学といった諸分野の知見を融合する"文理共創"により、新しい研究・教育領域の開拓とグローバル社会に貢献する人材の育成を目指します。そこでは、既存4学部との連携や新たなカリキュラムづくりが大きな課題となりますが、本学のキャンパスには学部・研究科単位の専用棟が一つもないことに象徴される一体感を、追い風にしたいと思います。

これらの課題の推進により、一橋大学は大きな変化を遂げていくことになりますが、一方で本学のアイデンティティともいえる強みは、決して失ってはなりません。その強みとは、例えば少人数ゼミナール教育です。一人ひとりの学生を手間暇かけて丁寧に育てることです。学部間の垣根の低さも本学の良さです。本学出身の教員には、卒業学部と奉職研究科が一致していない人もかなりいて、中野新学長もその一人(法学部卒の社会学研究科教授)です。社会科学を多角的に学べる柔軟性をもった本学ならではのことです。さらには、卒業生との絆の強さという財産もあります。毎年数多くの一橋生を世界各国に派遣留学生として送り出せているのも、如水会やOBOGの強力な支援の賜物です。

ところで、新型コロナウイルス感染症拡大下、キャンパスが持つ機能をオンラインなどでどう代替させていくかが喫緊の課題です。こういう時こそ、教育機関としての大学に本来課された「学問の楽しさを学生に伝える」という最も重要な使命を、しっかり果たしていけるよう努めていきたいと決意しております。

充実した学生生活が過ごせるよう、環境整備を

稲葉哲郎氏

稲葉 哲郎

副学長(学生担当)

このたび、学生担当の副学長に任命されました稲葉哲郎です。学生支援課が担当する課外活動、宿舎、奨学事業の他に、学生相談室、キャリア支援室、保健センター、障害学生支援室など学生の生活支援全般を担当します。

学生担当として、目下の最重要課題は、やはり新型コロナウイルスへの対応です。春夏学期の授業は全面的にオンライン化されましたが、9月からの秋冬学期は一部の授業を対面で行うことを予定しています。そこで、春夏学期には見えなかった問題が見えてくる可能性があるので、しっかり対応していきたいと思っています。対面授業が始まることで、コミュニケーションに関して不安をもつ学生が増えることが考えられます。経済的な影響が長期化することで、アルバイト先が見つからなかったり、ご実家が苦境に追い込まれたりして、経済的に困窮する学生が出てくることも考えられます。大学として支援策を検討し、卒業、修了へと導かなければなりません。課外活動も順次再開しつつありますが、クラスターを発生させないような取り組みが重要になります。

そして、最も気懸かりなのが、1年生の学生生活です。本来なら、キャンパスで友人とのネットワークづくりを行うなど授業以外の学生生活を充実させているはずが、その機会が失われてしまいました。今後どれほど取り戻せるか今はまだ不透明ですが、残る3年半ができるだけ充実したものになるよう、最大限の努力を惜しまないつもりです。SNSなどを活用してネットワーク作りに成功した学生とそうでない学生の間でコミュニケーションの格差が拡大している懸念があります。必要とされるサポート窓口に早めにつなげられるよう窓口の認知度を高める取り組みが必要です。

さて、一橋大学の卒業生の多くがこれまで大手企業への就職を決めており、そのことが本学の強みの一つでありました。近年は大手企業を目指す学生だけでなく、ベンチャー企業を選んだり、自ら起業したりする学生も増え始めています。キャリア支援としても、起業家のOB・OGの話を聞く機会を設けるなど、多様な選択肢を示してより豊かなキャリアデザインを応援したいと思っています。

一橋大学がより「卓越したコミュニティ」になるような学生支援を実現していきたいと考えています。

貴堂嘉之氏

貴堂 嘉之

社会学研究科長・社会学部長

このほど、阿部謹也先生(1992~1998)以来22年ぶりに社会学部/社会学研究科から、中野聡先生が第18代学長に就任されました。このタイミングで研究科長に就任できることを、大変光栄に思います。

さて、社会学研究科の強みは、社会学・哲学・社会思想・歴史学・教育学・政治学・社会人類学・社会心理など多彩な専門領域にわたる社会科学を担い、国内最高水準の教育研究拠点であり続けてきたことです。この研究の伝統を継承し、社会科学諸分野をグローバル時代に見合った、「グローバル社会科学」として発展・深化させることが、研究科の課題だと考えています。

社会学研究科教員の科研費採択率は国内最高水準であり、研究者養成においても、毎年、博士号授与数(課程博士と論文博士の合計)は年平均20.7本(2002年~2019年の平均)もあります。これは国内トップクラスの実績であり、これを維持・強化することも課題です。

部局長としての全学的取り組みとしては、去年、文科省が出した国立大学改革方針にある「持続可能でインクルーシブな社会、新しい社会の実現を目指す様々な人々が集い流動する多様性あふれる可能性に満ちた社会」のビジョン実現が大きな課題です。私はジェンダー社会科学研究センターの設立に携わり、おそらく一橋史上初のanti-racist, anti-sexistを公言する研究科長です。現在の『ハラスメント防止ガイドライン』の作成者の1人として、前文に謳われた「すべての学生と教職員の人権が尊重され、ハラスメントを受けることなく、本学において修学・教育・研究し、就労することができる環境」を実現するために、全学的に取り組むべき課題は山ほどあります。ここに新風を吹き込みたいと思っています。