一橋大学初のネーミングライツ・パートナー契約「東京商工リサーチ コモンズ」開設記念式典開催
2025年3月28日 掲載
一橋大学は、株式会社東京商工リサーチと大学施設等のネーミングライツ(命名権)取得に関する一橋大学初の「ネーミングライツ・パートナー契約」を締結。対象施設である一橋大学附属図書館時計台棟コモンズは2024年12月1日から2027年11月30日までの期間、「東京商工リサーチ コモンズ」となる。これを記念して2024年12月19日に、ネーミングライツ施設の開設記念式典が開催された。
式典には、株式会社東京商工リサーチから河原光雄代表取締役社長、友田信男常務取締役、影浦泰一常務取締役が、一橋大学から中野聡学長、野口貴公美理事・副学長、西野和美副学長が出席。式典では中野学長、河原社長による挨拶の後、テープカットや記念撮影が行われた。
「東京商工リサーチ コモンズ」開設記念座談会
式典終了後、一行はパートナー決定までの経緯や今後のパートナーシップなどについて、意見交換を行った。
河原 光雄氏
株式会社東京商工リサーチ 代表取締役社長
中野 聡
一橋大学 学長
野口 貴公美
一橋大学 理事・副学長(図書館統括、DEI、労務、学長特命(規則整備))
西野 和美
一橋大学 副学長(広報・社会連携、学長特命(研究IR))
一橋大学と東京商工リサーチ、共同研究の成果と新たなつながりの創出
東京商工リサーチ コモンズ
西野:一橋大学は、社会科学の総合大学として企業との連携を重視しており、このたび、附属図書館時計台棟のコモンズにネーミングライツ・パートナーとして東京商工リサーチの名前を冠することになりました。御社とは約7年前から共同研究を行い、4件の特許を共同取得するなど深い関係を築いてまいりました。来年度のソーシャル・データサイエンス学部の授業でもご協力いただく予定です。このパートナーシップを通じ、企業との結びつきをさらに強化し、より開かれた大学としての使命を果たしていきたいと考えております。
河原:一橋大学とは2017年より、弊社の企業情報データベース(以下、データ)を活用いただき共同研究を進めてまいりました。この7年間で4件の特許を取得するなど、大きな成果を挙げております。今回、一橋大学がネーミングライツ・パートナーを募集していることを知り、社内で検討の末、応募したところ採用いただき、非常に光栄に思っております。学内に弊社の名前を掲げていただけることは感慨深く、一橋大学の学生さんや関係者の皆様に知っていただけることも、弊社にとって大きな価値があります。さらに、一橋大学出身の経営者を含む顧客からも好意的な反応をいただいており、今回のパートナーシップが新たなつながりを生むことを期待しています。
西野:東京商工リサーチの130年以上の歴史の中で蓄積された貴重なデータは、私どもの研究において大変重要な役割を果たしています。経営や会計のデータを活用し、企業の成長や倒産の動向を分析することで、研究成果を生み出してきました。こうした連携をさらに広げ、より多くの成果を生む機会が増えることを期待しています。
河原:東京商工リサーチのデータは、一橋大学をはじめとするブランド力の高い大学で広く活用され、研究や施策の基盤として重要な役割を果たしています。学生さんには卒業後も、社会でデータを活用する際に、弊社のデータを利用していただければ幸いです。データの活用機会を増やし、経済の動向や施策の立案等に役立ててほしいと考えています。
弊社は、過去のデータの蓄積だけでなく、毎月更新される最新データを提供し、変化する社会に対応しています。たとえば、コロナ禍では企業倒産が減少しましたが、現在は増加傾向にあります。こうしたデータは新しい時代への変革を考える材料にもなります。また、AIの発展には質の高い情報が不可欠であり、弊社のデータがその土台として貢献できると考えています。今後も大学や研究機関と連携し、情報を活用した研究や社会への応用が広がることを期待しています。
ソーシャル・データサイエンス学部「PBL演習」で即戦⼒⼈材を育成
西野:日本には多くの中小企業が存在する中、これらを丹念に追ったデータは非常に貴重です。中小企業政策の検討や日本の産業構造の分析において、御社のデータを活用することで、新たな発見や有益な政策提言が生まれることが重要だと思っております。
河原:東京商工リサーチのデータを用いた論文が話題となり、海外から問い合わせが来るようになりました。日本で作成したデータは論文化されることで世界中に届きます。特にアメリカが最も多く活用しており、EUがそれに続きます。グローバル化が進む中で、弊社のデータは経済の発展や効率化に欠かせない役割を果たしていると考えています。
西野:御社のデータを今後ソーシャル・データサイエンス学部の学生も活用させていただけるとのことですが、この新たな取組に対して、どのような期待をお持ちでしょうか。
中野:「PBL(Project-Based Learning)演習」はソーシャル・データサイエンス学部3年生の学生が参加するもので、彼らはほぼ初めて企業が保有する生のデータを扱う経験をします。まだ成長過程にある学生たちですが、新しい分野に意欲的に取り組んでおり、その中でどのような成果が生まれるかは予測できない面白さを含んでいると思います。
河原:大学の中は試験管でいいと思います。セキュリティ等も強化していますので、学生さんは楽しみながら、自由にやられたらいいと思います。
西野:学生の自由な発想で、新たな知見や新たな分析方法、新しい事実などが見つかるかもしれません。そういった点を温かく見守っていただければ幸いです。本学に対して期待されることはございますか。
河原:一橋大学との共同研究やネーミングライツの連携は、弊社の社員も大変喜んでいます。特に一橋大学内に「東京商工リサーチ コモンズ」の名前があることは光栄であり、将来、学生さんが就職される際の選択肢に弊社が挙がることを期待しています。また、研究を通じて得られた知識やスキルを、企業や政府の施策に活かすことのできる学生さんの輩出を望んでいます。
西野:ありがとうございます。ますます責任が重くなってまいりました。
データを核とした一橋大学と東京商工リサーチの産学連携
河原:教室ごとにネーミングライツの募集を行っている大学もあり、驚きました。
中野:ネーミングライツ事業は、国立大学の財政状況が厳しいということがベースにありますが、一橋大学の場合は、社会連携・産学連携をさらに強めていくというメッセージも込めています。
一橋大学は、2022年度から6年間にわたる第4期中期目標・中期計画の期間において、本学が社会に示してきた強みや質の高さを活かしながら、さらに成長していくために必要な取組として、「開放性」「多様性」「社会連携」の強化をビジョンとして掲げ、その思いを「ひらく、つどう、つなぐ。」というメッセージに託しました。
実際に、社会とのつながりを学生や教員に示すため、産学連携を強化しているほか、実践的な社会貢献を重視し、事実やデータに基づいた学問を推進しています。その観点から、東京商工リサーチとの連携は最適であると考えています。このパートナーシップが、大学にとって大きな成長のきっかけになることを期待しています。
野口:一橋大学としては初のチャレンジであるネーミングライツ事業をどの施設を対象に実施にするかということについては、学内において議論してまいりました。その議論の結果、学生が集う場、考える場、大学で得た知識を社会につなげていく場ということで、本学を最も象徴する施設として、附属図書館時計台棟のコモンズが選ばれました。
図書館統括という立場からいたしますと、図書館という大切な場所のなかに、名前を付していただく企業がどのような企業になるのかは、決定するまでの間、正直なところ、心配もありました。
しかし、学長の言葉にもありましたように、東京商工リサーチに決まったことは、図書館にとってはこれ以上のパートナーはいないお話と感じています。情報を大切にし、考える力を大切にし、そして、学生の自由な発想に期待をしてくださるという企業、東京商工リサーチの名前がコモンズに冠されることは、図書館の代表としても大変嬉しく、感謝を申し上げます。
河原:たしかに図書館は一橋大学を象徴する施設ですね。
野口:ありがとうございます。図書館は、大学を象徴する大切な場所であるからこそ、手をつないでいただくパートナーは大切になると考えていました。
西野:今回のパートナーシップが、双方にとって新たな連携を創出する機会となることを期待しています。本日は本当にありがとうございました。