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求める学生像と、入試の特徴

2022年10月3日 掲載

本学が2023年度に新設する、ソーシャル・データサイエンス学部・研究科。"社会科学の総合大学"としての長い歴史を誇る本学において、初の理系要素の強い学部・研究科であり、その設置については経済界などから大きな期待が寄せられている。そこで、本学部・研究科の教育カリキュラムの特徴や卒業生のキャリアイメージ、本学が求める学生像、入試の特徴などについて、本学部・研究科設置準備組織であるソーシャル・データサイエンス教育研究推進センターの渡部敏明センター長及び副センター長の七丈直弘教授に話を聞いた。

ソーシャル・データサイエンス学部・研究科のコンセプトと学生像

画像:渡部 敏明氏

ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター
センター長 渡部 敏明

データは、"21世紀の石油"とも呼ばれるほど、重要な資源と言われています。現在では多種多様な大量のデータが入手可能であり、それらのデータを収集・蓄積・分析することによって企業の競争力向上やより良い社会づくりが可能になるからです。

しかし、我が国にはデータサイエンス人材が圧倒的に不足していると言われています。そこで政府は、2019年6月にまとめた「AI戦略」で、25年までにすべての高校の卒業生が「数理・データサイエンス・AI」の基礎的なリテラシーを身につけるといった目標を示しました。こうした流れを受け、大学にデータサイエンス系学部を設置する動きが相次いでいます。

その中にあって、本学のソーシャル・データサイエンス学部・研究科は、"ソーシャル"の名がつけられているところに、最大の特徴があります。一橋大学は歴史ある日本の社会科学の総合大学として名高いですが、その利点を活かし、商学部・経済学部・法学部・社会学部の4学部の持つ知見やノウハウとデータサイエンスを融合させ、データを活用してビジネスを革新し社会の諸課題を解決する方策を提案・実行できる人材の育成に主眼を置いています。このコンセプトにおいて、本学部・研究科は世界においても随一の存在となると自負しています。

本学部・研究科の卒業生や修了生は、企業においてハイレベルなマーケティングの実行や事業戦略の意思決定に携わっていくことが考えられます。また、官公庁においてはEBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)を担ううえで必要なデータ分析・活用の手法を身につけ、活躍できることと思います。こうした人材は、今最も社会で必要とされる、極めて付加価値の高い人材であると言えます。

では、本学部・研究科に迎えたい学生像とはどういったものでしょうか。まず問われるのは、基礎力としての数学の素養です。データサイエンスには統計や計算が不可欠であり、数学を避けて通ることはできません。得意ではなくても、アレルギーがない、嫌いではないことは最低条件でしょう。また、学部・研究科でも数学を学ぶカリキュラムは豊富に用意していますので、入学後に数学の力を高めることは十分可能です。

そして、社会や経済への関心が高いことです。たとえば、2022年3月あたりから急激に円安が始まったのはなぜなのか、気候変動と経済にはどういった関係があるのか、といったことに関心を持つことも不可欠です。本学部・研究科の学生は、社会科学分野で日本屈指の歴史と実績を誇る本学他学部・研究科の授業を履修することも可能であり、高度な知見を身につけることができます。

そして、与えられた課題とデータをただ分析するという態度ではなく、社会の諸相における問題を自ら見つけ出し、自らデータを揃えて分析し、解決への道筋を提言するといった主体性も、一橋大学生らしさとして求められるでしょう。

本学部では、企業や官公庁の方々にも来ていただき、現場の実態に即した課題を、実データにより分析する演習を行います。その実施のため、すでに多くの企業・官公庁から、ご協力のお申し出をいただいております。いかに本学部・研究科とその卒業生・修了生への期待値が高いかの表れと言えるでしょう。学部は60名、研究科は21名でのスタートです。まさしく少数精鋭。我こそは、という学生諸君の応募を期待しています(談)。

ソーシャル・データサイエンス学部の入学試験の概要

画像:七丈 直弘氏

ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター
副センター長 七丈 直弘

大学の入学試験の内容は、どういった資質を有する学生を受け入れるかというアドミッション・ポリシーに基づいて決定されます。そのアドミッション・ポリシーは、学位取得要件であるディプロマ・ポリシーに基づき、そのディプロマ・ポリシーは、育成する人材像に基づいて決定されるという関係性があります。

本学のソーシャル・データサイエンス学部のコンセプトは、先に渡部センター長が述べているとおり、「データを活用してビジネスを革新し社会の諸課題を解決する方策を提案・実行できる人材」、いわばデータサイエンスに長けたマネジメント人材の育成にあります。このため、本学部においては、すべての学生が社会科学とデータサイエンスの知識を融合するために組まれたカリキュラムを相応のレベルで履修・修得することが求められます。

こうした趣旨のアドミッション・ポリシーに基づき、2023年度入学者選抜試験は次のとおりの内容としています。

まず、一般選抜(募集人数計55名)と学校推薦型選抜(同5名)を行います。なお、本学部の入学定員が60名と少数なのは、学生の主体的・協調的な学びを重視し、PBL(Project-Based Learning)演習やゼミナールなど少人数であることによって教育効果が高まる演習形式の科目を多く取り入れていることによります。

すべての選抜試験において、基礎学力を確認するために大学入学共通テストでの「国語」「地理歴史/公民」「数学」「理科」「外国語」の5教科の受験と調査書が必要です。この試験科目は、本学部の"文理融合"というコンセプトに基づくカリキュラムを前提として、高校の文系・理系双方の生徒を受け入れるために設定しています。

加えて、一般選抜においては前期日程、後期日程での選抜を実施することで、アドミッション・ポリシーで求める資質を持つ入学者を幅広く受け入れます。

前期日程では、基礎学力と、社会において数理的なものの考え方を応用する力、情報技術の活用について自ら試行する姿勢を備えた者を選抜します。このため、大学入学共通テストでは、「地理歴史/公民」から最大2科目、「理科」から最大2科目の計3科目を課します。特徴的なのは「総合問題」を課すこと。これは、社会において数理的なものの考え方を応用する力、情報技術の活用について自ら試行する姿勢を確認するための科目です。本学のウェブサイトにサンプル問題を掲載しておりますが、初めて見る問題であっても、論理的思考力や情報処理能力を用いて取り組んでいただきたいと思います。

後期日程のポイントは、基礎学力に加え、特に数学と英語の学力に秀でた者を選抜することです。このため、数学においては数学Ⅲも出題範囲に含む選択問題を設定します。一方、大学入学共通テストでは、「地理歴史/公民」・「理科」から各1科目を課すものとします。

学校推薦型選抜においては、英検1級、日本数学オリンピック予選通過、応用情報技術者試験合格、統計検定2級A評価合格等といった、外国語、数学、情報学、統計学に関するいずれか一つ以上の高度な能力を有することを出願条件とし、大学入学共通テストと調査書、推薦書、自己推薦書、小論文及び面接で総合的に評価します。

なお、詳細は募集要項などを必ず確認してください(談)