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新たに生まれ変わった一橋ビジネススクールの階段教室が、所縁の地一ツ橋に誕生!

2017年秋号vol.56 掲載

2018年4月、一橋大学大学院は現在の商学研究科と国際企業戦略研究科を統合し、新たに「一橋ビジネススクール」を開設する。新生一橋大学ビジネススクールの誕生に伴い、一橋大学の名前の由来ともなった所縁の地・神田一ツ橋に新しい学習施設が竣工の最終段階を迎えている。
一橋大学のルーツは、明治維新直後の激動の中、1875(明治8)年に、将来の日本を支える経営人材の育成のために森有礼によって設立された私塾「商法講習所(The Commercial Training School)」に遡る。東京高等商業学校、東京商科大学などを経て発展してきた一橋大学は、日本におけるマネジメント教育・研究の中心として、企業・社会の中核を担う人材を数多く輩出している。
新設される一橋ビジネススクールの最大の特徴は、主として企業や組織で活躍している、あるいは自身のキャリアアップを目的に大学で学び直したいと考える一般社会人を対象にリーダー養成を行う点にある(一部学部生を対象にした5年一貫プログラムがある)。千代田キャンパス(神田一ツ橋)の設置及び改修は、社会人学生にとっての通いやすさというビジネスパーソンのニーズに応えたものである。

大学昇格を果たした一橋大学所縁の地・神田一ツ橋が学びの拠点となる

東京商科大学・大講堂

東京商科大学・大講堂

一橋ビジネススクールは、「経営分析」「経営管理」「ホスピタリティ・マネジメント」「金融戦略・経営財務」「国際企業戦略」の5つのプログラムで構成されているが、そのうちの4つのプログラムが、千代田キャンパスの活用を視野に入れている。ビジネススクールのプログラムについては『HQ』第57号で改めて詳述するが、ここでは千代田キャンパスがある神田一ツ橋と一橋大学の関係について触れてみたい。一橋大学の前身は、商法講習所であったことはすでに述べたが、森有礼の私塾としてスタートした商法講習所は、翌1876(明治9)年には東京府立となり校舎を中央区木挽町に構えた。1884(明治17)年には農商務省の直轄となり、東京商業学校と名称を変える。1885(明治18)年の東京外国語学校との合併を機に、神田一ツ橋(現・千代田キャンパスの場所)に校舎を移転、1887(明治20)年に高等商業学校、1902(明治35)年に東京高等商業学校へと名称変更を重ねる一方で、専攻部、教員養成所を附設するなど、高等教育機関として着実に成長していく。そして1920(大正9)年、東京高等商業学校は、念願であった大学昇格を果たすことになる。東京商科大学の誕生である。

東京商科大学・正門

東京商科大学・正門

東京商科大学・全景

東京商科大学・全景

大学への昇格を果たした場所、千代田区一ツ橋について川崎操氏(一橋大学附属図書館事務長、1950-1966年)は、「一ツ橋の今昔」(『書物の周圍』第2年第1号p23〜30、1935)の中で次のように綴っている。
「一ツ橋という名称、一ツ橋という土地は我が商科大学に関する限り永久に不可分の間柄にある最も関係の深い土地であり、最も懐かしい名称である。一ツ橋は単に我が商科大学の生い立った土地であるばかりでなく、実に徳川末期より明治黎明期にかけての文化に重大なる役割を持った土地なのである」
ところが大学昇格からわずか3年後、東京商科大学はキャンパスを失うことになる。関東大震災(1923〈大正12〉年)である。

「関東大震災後の神田一橋 学園関係の写真」から抜粋写真

関東大震災直後の神田一ツ橋
一橋大学学園史資料室所蔵「関東大震災後の神田一橋 学園関係の写真」から抜粋

この震災で東京商科大学は、大学施設の大半を焼失してしまうという甚大な被害を受ける。震災後は神田にて仮校舎を設け授業を続けたが、佐野善作東京商科大学初代学長は谷保村(現・国立市)への大学建設を決断し、1930(昭和5)年、キャンパスの完全移転が完了する。その後1949(昭和24)年に東京商科大学は改組され、新制一橋大学となる。

つまり一橋ビジネススクールの千代田キャンパスは、ビジネスを専門に学べる日本で初めての大学、東京商科大学が誕生した、一橋大学にとって象徴的な場所なのである。現在、東京商科大学跡地である千代田区一ツ橋には、同窓会組織如水会が本部を置く如水会館及び2012(平成24)年に一橋大学に移管された一橋講堂、一橋ビジネススクールが置かれる学術総合センタービルなどがある。

日本独自のビジネススクールのニーズを考慮し、平日夜間・土曜に都心で学べる環境を整備

一橋ビジネススクールが備えるプログラムのうち、「経営管理プログラム」「ホスピタリティ・マネジメント・プログラム」「金融戦略・経営財務プログラム」は、千代田キャンパスをメインキャンパスとして平日夜間及び土曜に開講される。これは日本におけるビジネススクールのニーズに向き合った結果、と商学研究科長の蜂谷豊彦教授は語る。

蜂谷豊彦教授写真

商学研究科長
蜂谷豊彦教授

「欧米ではMBAを取得するために一度企業を辞めて、1〜2年間スクールに通うことが一般的です。一方日本では、企業が自社で採用した人材をスクールに派遣する、つまり働きながら通って学ぶ、というニーズも多いんですね。この大きなニーズを満たすためには、やはりキャンパスは都心にあり、最寄り駅から徒歩5~10分圏内で、というロケーションは欠かせません。そこで千代田キャンパスにプログラムの拠点をシフトしました。こうすることで、平日の夜間でも、土曜でも、学生が通学の負担を感じることなくプログラムに集中できる環境を提供したいと考えています」(蜂谷教授)

日本におけるビジネススクールの水準を上げ、国際競争力を強化するための取り組みの一環として、講義室の大改修も実施

注目したいのは、一橋ビジネススクール開設にあたって講義室の大改修を行ったことだ。欧米の主要な大学の講義室をリサーチして新たに生まれ変わったこの講義室は主に「経営管理プログラム」及び「ホスピタリティ・マネジメント・プログラム」を履修する学生が利用することになる。同プログラムが想定する学生は30代のビジネスパーソンが中心。その学生が、落ち着いて講義を聴いたり講師と意見を交わしたりするには、相応のプレミアム感が大切になる、と蜂谷教授は語る。
「日本におけるビジネススクールの水準を引き上げ、高度経営人材を育成することによって、日本企業の国際競争力を強化したいと考えています。そのためには『働きながら学びたい』というニーズに応える必要がありますし、プログラムも物理的環境も世界に伍するものでなければなりません。最近では日本企業でも、MBAプログラムを学んだ人材にふさわしい活躍の場を提供する動きが出始めています。このような大きな変化の中で、一橋ビジネススクールが用意した新しい選択肢を、たくさんの学生に活用してほしいですね」(蜂谷教授)

一橋ビジネススクール 千代田キャンパス概要

場所

〒101-8439 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
学術総合センター内

最寄り駅

東京メトロ半蔵門線・都営三田線・都営新宿線
神保町駅 徒歩3分
東京メトロ東西線 竹橋駅 徒歩4分

主な施設詳細(2017年8月現在)

  • 大講義室(収容人数:121名〈車いす利用時〉、スクリーン・プロジェクター3台設置)(198m2
  • 通訳ブース(セミナー等の際に、通訳が入るブース)(20m2
  • セミナー室1(51m2
  • セミナー室2(間仕切りで2部屋。29m2と23m2
  • 教員控室(63m2) 等

一橋ビジネススクール・大講義室(イメージ図)

一橋ビジネススクール・大講義室(イメージ図)

(2017年10月 掲載)