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進む国際交流の「多様化」

2022年10月3日 掲載

2022年度からの第4期中期目標・中期計画期間において、本学は開放性、多様性、社会連携の重視を打ち出し、「ひらく、つどう、つなぐ」というキーワードを掲げた。国際交流はまさしくこれらのキーワードがすべて包含される領域である。

海外留学は新型コロナウイルスのパンデミックでゼロ近くまで落ち込んだものの、すでにV字回復の途上にある。一橋大学では、ポストコロナを睨んでパンデミック下においても国際交流の強化・拡大に努めてきた。特に力を入れてきたのが、「多様化」に向けての取り組みである。

そこで、ここでは最近協定を締結した新たな海外のパートナー大学を紹介する。

地域的な「多様化」

地域偏在傾向のあった海外協定校の空白地域を埋めるように「多様化」を進めており、2021~22年に下記大学との国際交流協定を締結した。

ヘブライ大学(イスラエル)

これまで部局間での協定はあったものの、このほど中東エリア初の全学協定を締結することとなった。エルサレムにあるイスラエルのトップ大学で、ノーベル賞受賞者も輩出している。国際交流に熱心で世界中から留学生を集めており、ヘブライ語はもちろん、英語でも学べる。

画像:建物の外観

パシフィコ大学(ペルー)

南米エリア初の全学協定校で、首都リマにあり、経営学や経済学、国際ビジネス分野ではラテンアメリカ屈指の研究機関である。ビジネススクールではAACSB及びAMBAの認証を受けている。本学の「キャプテンズ・オブ・インダストリー」に通じる理念を掲げ、国際交流に熱心で、英語でもスペイン語でも学べる。

画像:館内を歩く学生

世界経済外交大学(ウズベキスタン)

ロシアを除く旧ソ連諸国で初の協定校で、首都タシュケントにあり、国際関係、国際法、国際経済などで英語の授業が豊富にあり、外交官を多数輩出している。当地ではロシア語も用いられており、ロシアへの留学が困難な情勢下、ロシア語を学べる貴重な環境でもある。

世界経済大学(ブルガリア)

東ヨーロッパ初の全学協定校で、首都ソフィアにあり、首相をはじめ政財界に多数の人材を輩出している。また、卒業生にはIMF(国際通貨基金)専務理事のK・ゲオルギエバ氏がいる。

歴史・文化的な「多様化」

どの国においても、大学はその国や地域の歴史と深く関わっている。日本にいては知ることのできない深いレベルで歴史や文化を直接体験できるチャンスを増やし、「多様化」を意識的に進めている。

ヘブライ大学(前出)

イスラエルの地にヘブライ人の大学をつくるという長年の夢を実現させた大学で、アインシュタインの遺産と書物が寄贈されている。20世紀初頭の大学設立に続き、第二次世界大戦後にユダヤ人国家が建設された流れの中に位置する、シオニズムの歴史が詰まっている大学。

ベルリン自由大学(ドイツ)

2021年に協定を締結。名門ベルリン大学が第二次世界大戦後、ソ連の統制を受けていたため、一部の学生や教職員が学問の自由を求め西ベルリンに"自由"大学を設立した。この大学名そのものに歴史が刻まれている。

ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)

ヨーロッパ最古のカトリック系大学で、第一次世界大戦の際、ドイツ軍の侵攻で27万冊の蔵書ごと図書館が全焼。その後、世界中の大学や慈善団体などの協力で再建され、それらの名前が図書館の石柱に刻まれている。日本の昭和天皇も皇太子時代に約1万5000冊の和書を寄贈し、菊の紋章が屋根の部分に飾られている。世界が力を合わせ戦禍から学問を蘇らせた歴史を実感できるだろう。

従来から強いエリアのさらなる「多様化」

本学の留学制度は、将来を担う世界のグローバル人材と直接交流することで、学び合う機会づくりを目的としている。留学先への派遣はもちろん、海外からの学生の受け入れを拡大することで、留学しない学生も含めたすべての学生の交流機会が開かれる。そのため、従来から本学が強みとするエリアの世界トップ校とのさらなるパートナーシップ強化にも取り組んでいる。

梨花女子大学(韓国)

「SKY」と呼ばれる3大名門校(ソウル大学、高麗大学、延世大学)と協定を結んでいる韓国において、2021年に新たに女子大トップの梨花女子大学を加えた。女子大とは初の協定締結である。なお、交換プログラムは男子学生も派遣可能である。

復旦大学浙江大学(中国)

北京大学、清華大学などの協定校がある中国で、2020年に世界大学ランキング上位校の両大学を協定校に加えた。北京以外の都市の留学機会を広げ「多様化」を進めている。

ブリストル大学ダラム大学(イギリス)

オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、LSEなどに加え、世界的名門校である両大学と2021年に協定を締結した。イギリスにおいても地域的な「多様化」を進めている。

IE大学ESADE(スペイン)
オーデンシア・ビジネススクール(フランス)

2020~2022年に経営学、経済学で世界トップレベルの3大学と協定を締結した。いずれも本学と同じくビジネススクールの国際認証を取得している。なお、本学学生はMBAだけでなく学部への留学もできる。

オンラインによる「多様化」

コロナ禍を契機に、オンラインによる国際交流も広がりをみせている。本学が新設した「グローバル・オンライン教育センター」を足がかりに、こうした国際交流もさらに拡充していく。

SIGMA(欧州・アジア・南米の大学連携)

SDGsをテーマとするオンライン共同講義を続けてきたが、2022年秋から新たにデジタル・トランスフォーメーション(DX)の講義が追加される。学生が参加するアクティブ・ラーニング型の授業で世界の学生と討論する機会を広げていく。

ノースウェスタン大学(アメリカ)

2021年度から、同大学と共同で原爆投下や核問題について討論するオンライン授業を始めている。日米学生の活発な討論が期待される。

協定締結の少ないエリアとして、アフリカや中東、南米などが残されている。たとえば、国連など国際機関に属して発展途上国の開発に携わることを志望する学生は少なくない。こうした学生にとって、在学中に当該エリアで学べる機会は貴重である。また、より多様なエリアからの留学生を本学キャンパスに迎え入れることも、本学で学ぶ学生にとって貴重な交流機会につながるだろう。こうした点から、重要なテーマである「国際交流」の「多様化」はこれからも重要なテーマとして引き続き努めていく。