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一橋大学から目指す、世界トップ校への留学

2019年10月1日 掲載

「グローバル化の進む社会に柔軟に対応することができ、現代の社会に貢献し得る人材」の育成を教育目標として掲げている一橋大学は、早くから国際化及び学生の海外留学や外国人留学生の受け入れに力を入れて取り組んできた。とりわけ注目すべきは、ハーバード大学やケンブリッジ大学をはじめとする世界トップ校への留学である。そこで、同制度を中心に本学の留学制度の特色や意義、留学を経験した学生の感想を紹介する。

海外留学に出る学部生は半数近く

一橋大学では、90年代の初めから世界の有力大学と学生交流協定を締結し、2019年5月現在の学生交流協定校は、30の国と地域の104大学に及んでいる。
「協定校は、本学の学生を送り込むに相応しい、社会科学領域で優れた実績を挙げている各国・地域のトップレベルの大学を吟味しています。研究者や学部同士のつながりをベースに、1校ずつ我々スタッフが足を運び、修学環境や生活環境を確かめ、丁寧に信頼関係を構築してきました。決して急ごしらえをして整備しているわけではありません。どの協定校にも、胸を張って学生を送り出せます」と国際交流を担当する山田敦副学長は話す。 海外留学制度としては、最長1年の「海外派遣留学制度」(交換留学制度)、世界のトップ校に留学する「グローバルリーダー育成海外留学制度」、数週間という短期のサマースクールや語学研修、海外調査などさまざまなプログラムを用意。これらのプログラムを利用して渡航する学部生は、約45%に達する(2018年度)。

一橋大学の留学制度については以下よりご覧ください。
http://international.hit-u.ac.jp/jp/abroad/pdf/news/Study_Abroad_Program_2019_20190725.pdf

「グローバルリーダー育成海外留学制度」

中でも、特筆すべきは「グローバルリーダー育成海外留学制度」だ。ハーバード大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスという世界トップクラスの大学で、最長1年という長期間、学ぶことができる(募集人数4人程度、派遣先ごとに異なる語学要件あり)。
「海外の大学と協定を結ぶ際には、できるだけ幅広い科目を履修できるように交渉しています。世界のトップ大学では、ノーベル物理学賞を受賞した教授の物理学の講義なども受講できる可能性があります。本学の学生は総じて優秀ではありますが、さらに上を目指す大きな機会とすることができるでしょう」(山田副学長)
留学の効果を最大限に高めるためにも、本学としては長期留学を奨励している。その「海外派遣留学制度」の協定校のレベルは前述のとおりどこも遜色のない高さにあるが、アジア地域を中心に学生の応募数が募集枠に達していない大学もある。
「欧米の大学に人気が集まる傾向がありますが、発展著しい中国や東南アジアなどの大学はエネルギーに満ち満ちており、日本人学生は大いに刺激を受けることができるはず。ぜひ目を向けてほしいと思います」(山田副学長)

一橋大学から留学できる海外のトップレベル大学(抜粋)

【北米】

  • ハーバード大学(米国)
  • カリフォルニア大学バークレー校(米国)
  • ブリティシュコロンビア大学(カナダ)

【英国】

  • ケンブリッジ大学
  • オックスフォード大学
  • ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス

【ヨーロッパ】

  • ウィーン大学(オーストリア)
  • ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)
  • パリ政治学院(フランス)
  • パリ第一大学パンテオン-ソルボンヌ(フランス)
  • ハイデルベルク大学(ドイツ)
  • エラスムス大学ロッテルダム経済学部(オランダ)

【東アジア】

  • 北京大学(中国)
  • 清華大学(中国)
  • 中国人民大学(中国)
  • 香港大学(中国)
  • ソウル大学(韓国)
  • 国立台湾大学(台湾)

【東南アジア】

  • チュラロンコン大学商学・会計学院(タイ)
  • インドネシア大学(インドネシア)

【オセアニア】

  • オーストラリア国立大学(オーストラリア)

手厚い経済的支援

一橋大学の「海外派遣留学制度」や「グローバルリーダー育成海外留学制度」の大きな特徴として、経済的支援の手厚さが挙げられる。まず、留学先への授業料は不要である(一橋大学に授業料を納めれば、二重に支払う必要はない)。さらに、飛行機代を含む留学準備金の支給や、現地での生活費の一部をサポート(留学地域の物価に応じて支給額が異なる)。留学だけでなく、「経済学部短期海外調査」といった海外に渡航する授業やセミナーなどのプログラムもこうした支援の対象となっている。
こうした資金は、「如水会」などの一橋大学の同窓会組織や一部の卒業生のご提供による「一橋大学海外留学奨学金」※1「榊原忠幸基金海外留学支援資金奨学金」※2「堀海外留学支援資金奨学金」※3から供出している(それぞれ供出条件あり)。

  • 1 一橋大学海外留学奨学金:一般社団法人如水会、一般社団法人明治産業人材育成支援会の寄付による奨学金
  • 2 榊原忠幸基金海外留学支援資金奨学金:故榊原忠幸氏(本学卒業生)の御令室の寄付による奨学金
  • 3 堀海外留学支援資金奨学金:堀誠氏(本学卒業生)の寄付による奨学金。愛知県内の高等学校出身者で成績優秀者に支給

トップレベルの外国人留学生比率

交換留学制度があるからには、一橋大学にも本学の留学生と基本的に同数の外国人留学生が来ていることになる。加えて、学士、修士、博士の学位を取るために来る留学生も非常に多い。その数は学部及び大学院を併せて約900人・全学生の13.7%強に及び、全国トップクラスの比率を誇っている(2018年度)。留学生の数が増えるとともに日本語を話せない留学生が増加したこともあり、英語による専門科目の授業を110科目以上と充実させている。もちろん、日本人学生も受講可能であり、外国人留学生と文字通り"机を並べて"の学習機会となる。小平国際キャンパスにある一橋大学国際学生宿舎一橋寮は、日本人学生と外国人留学生が共に寄宿する。たとえば6人ユニットタイプの部屋では、日本人学生と留学生が意図的に組み合わせられており、できるだけ同じユニットに出身国の異なる複数の留学生を配置している。部屋単位での文化交流を促進し寮全体に波及させるよう配慮している点も特長的といえる。

一段とスケールアップできる海外留学へ

また、各学部には、海外留学を修了要件とする選抜型のグローバル人材育成プログラム(Global Leaders Program:GLP)も用意されている。
「学生は"粒ぞろい"で、誰もが日本社会では優れた成果を上げるポテンシャルを持っています。さらに、海外に飛び出ることで、異文化の中、多様な考え方や自分より優れた学生たちに交わって一皮むけることができる。そうして、一段とスケールアップして帰ってきてほしいと思っています。そんな学生の姿に、ほかの学生も刺激を受けて『自分も』となるはずです。グローバル人材になりたい高校生の諸君はぜひ一橋大学を目指してほしいし、一橋に入ったからには海外留学に出てほしいと願っています」と山田副学長は期待を寄せる。

上原伊織さん

上原 伊織さん(商学部4年)

留学先:チュラロンコン大学(タイ)
留学期間:2017年8月~2018年5月
留学制度:一橋大学海外派遣留学制度を利用

一橋大学に入学した時は留学について意識していませんでしたが、一橋寮に入り、アジア諸国からの留学生と日常生活を共にするようになって、気持ちが変わりました。英語が堪能な彼らに触発され、英語に苦手意識を持っていた自分も、海外に行って揉まれたいと感じたのです。

チュラロンコン大学を選んだ理由は、初めての海外生活の場所としてタイは精神的なハードルが低いことと、タイのトップ大学であったことです。東南アジアで日本企業が最も進出しているのはタイですし、大学のあるバンコクには日本食のお店がたくさんあり、日本のカルチャーに好意的で、親日的なイメージがありました。実際、授業の最初に自己紹介する機会で「日本人です」と言うと拍手や歓声が湧きました。休憩時間に4~5人のタイ人学生が自分を囲み、「東京に行ったことがある」といった話をしてくるのです。日本人に良いイメージを持っている人が想像以上に多く、驚きました。また、留学先である商学部には日本人留学生が3人しかおらず、クラスで日本人は自分だけのことがほとんどでした。日本企業の経営戦略について教授から指されるといったことがよくあり、いい意味でいつもプレッシャーを感じました。また、周囲はタイ人の学生と海外留学生ばかりで、日々のコミュニケーションは、英語のみ。結果として英語力も相当鍛えられたと思います。

チュラロンコン大学の授業は、講義に加えグループディスカッションやプレゼンテーションが多く、そこで鍛えられた学生たちは、主体的かつ積極的で、日本の学生は果たして対抗していけるのかと不安になるほど。そういう世界に触れられたという意味でも、留学は有意義でした。(談)

関戸陽美さん

関戸 陽美さん(経済学部4年)

留学先:カリフォルニア大学バークレー校(米国)
留学期間:2017年8月~2018年6月
留学制度:一橋大学海外派遣留学制度を利用

高校2年の時、一橋大学のオープンキャンパスで留学制度のことを知り、「自分も行けるかも」と関心が湧きました。留学が一橋大学を選択する動機の一つになりました。入学後は英語力のアップを目的に国際部に入部し、ディベートに取り組みました。そして、1年の夏に語学留学でオーストラリアのクイーンズランド大学に行き、初の海外生活を送りました。この時の体験で、海外での生活に自信を持ちました。また私は経済学部が提供するGLP選抜クラスに入ったのですが、このプログラムでは、英語による授業が必須で、そこでも英語力を身につけることができました。
こうした準備を経て、3年の8月から4年の6月まで、カリフォルニア大学バークレー校に留学しました。バークレーは典型的な大学街で、どこに行っても真面目に勉強に取り組む学生ばかり。「週末の予定は?」と聞くと「勉強」「私も」という感じなのです。私も大学で仲良くなった友人たちと一緒に課題に取り組んだり、24時間開いている図書館をよく利用して勉強したりしました。全部で30コマほどの授業を履修しました。中でも、アフリカの経済発展を研究している教授から現地の話が聞けた授業は、貴重な体験でした。

関戸陽美さん:留学先での写真

バークレーで10か月過ごしたことで、私の視野も広がりました。それまで見ていた世界や思っていた考え方が絶対ではなく、さまざまな価値観があることを知り、自分の常識を疑う良い機会になりました。たとえば、カフェなどでも日本ではあまり馴染みのないベジタリアンへの対応が、ごく普通のこととしてありました。帰国後はHEPSA(一橋大学派遣交換留学生の会)の学生代表になって、留学の意義を広める活動に取り組んでいます。(談)

永田祐介さん

永田 佑介さん(社会学部4年)

留学先:ケンブリッジ大学(英国)
留学期間:2019年1月~7月(トライメスター制で、2トライメスター分)
留学制度:グローバルリーダー育成海外留学制度を利用

小学校時代に家庭の事情で地方在住の祖母に育てられた期間があったのですが、その経験を通じて地域格差・家庭ごとの格差を感じていました。これを解消できるのは政治であるというところから、福祉政策の分野に興味を持ちました。
大学では福祉国家政策を研究しており、現在は特にアメリカやイギリスの"低負担低福祉"の国の政策に関心があります。このたび、ケンブリッジ大学のスプリングセメスタープログラムを留学先に選んだのは、ケンブリッジ大学の学び方である、スーパーバイザーと呼ばれる専任の教授と師弟関係を築き、自分のパーソナリティを尊重してもらいながら指導を受けられる教育制度に魅力を感じたからです。また、ケンブリッジ大学には自分が関心を持つ領域において素晴らしい論文を残した、尊敬する先生方がたくさんいました。現地では実際に講義を受けたりお話をしたりする機会もありました。

1コースにつき講義は週1~2回、1時間なのですが、関連する論文を毎週20~30本読み、それに対する自分の論考をエッセイにまとめ、教授からマンツーマンでスーパービジョンを受ける時間があります。50ページほどの論文を書くコースも履修しましたが、非常に厳しい、中身の詰まった半年間でした。これほど徹底的に勉強した期間は、かつてありません。
同じプログラムの学生は30人強で、自分以外は全員、ハーバード大学やコロンビア大学といったアメリカの上位校からの留学生でした。世界トップレベルの学生と交わり、彼らの、徹底して学び、徹底して楽しむスタイルや、高い精神力、学力に刺激を受けました。

学部卒業後は、再びイギリスの大学院に留学し、さらに研鑽を積みたいと考えているところです。(談)

永田祐介さん:留学先での写真