一橋教員の本
独占禁止法における社会公共目的の役割 : グリーン社会・SDGsの実現に向けて
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柳武史著 |
著者コメント
本書は、グリーン社会(脱炭素社会)やSDGs(持続可能な発展目標)を実現するために独占禁止法の解釈を修正するべきか、あるいは適用除外立法を制定するべきか、という現代的課題について、欧州との比較を交えながら検討を行ったものです。本書においては、議論が先行している欧州の動態を分析するとともに、欧州と我が国はそもそもカルテル規制などの条文構造が異なっているところ、その相違を踏まえて、日本法への示唆を導出することを試みました。
本書は、著者の博士後期課程大学院生の折からの研究テーマである「正当化事由」論を、以上のような現代的な文脈で再構成したものと位置付けられます。すなわち、独占禁止法において価格引下げ競争の回避という不利益と環境保護などのそれ以外の利益をどのような枠組で比較衡量するかという「正当化事由」論は古くて新しい問題です。独占禁止法における社会公共目的の役割とは、結局のところ独占禁止法の例外的事象をどこまで認めるのかという本質的課題ですから、突き詰めれば、それは独占禁止法の存在意義を裏側から明らかにすることにつながり、独占禁止法の目的に関する議論を深化する波及効果が期待できるのです。そこで、本書はグリーン社会やSDGsの実現を直接の対象にしたものではありますが、人権デュー・ディリジェンス(人権DD)・人口減少・経済安全保障などの残された喫緊の具体的な課題への応用可能性をも視野に入れた基本的視座を提示することを目指しました。
本書を通じて、企業の経済活動等を総合的に規律しているダイナミックな法政策分野である経済法・独占禁止法の息吹きを感じてもらえたらとても嬉しく思います。
