一橋教員の本

災害法

災害法

大橋洋一編 ; 原田大樹, 田代滉貴, 土井翼[ほか] 著
有斐閣 2022年11月刊行
ISBN : 9784641228733

刊行時著者所属:
土井翼(法学研究科)

著者コメント

 日本では土砂崩れ、豪雨災害、地震、原発事故などの災害が数多く発生してきました。私たち著者が専攻する法学は、災害それ自体を分析したり、災害からの復旧・復興を物理的に実現するための手段や装置を開発したりすることについては無力です。しかし、災害に対応するための法制度を分析し、その問題点や改善方法を提案することで、災害による被害の減少に貢献することはできます。しかし、残念なことに、これまで法学において「災害法」という分野はそれほど研究されてきませんでした。本書は、この分野の体系的な開拓を一歩進めようとする意欲的な企画です。執筆に際しては、行政官や法曹の方はもちろん、災害法や行政法に関心のある学生、一般の方も想定読者として、わかりやすい記述を心がけました。 

  内容をもう少し詳しく説明すれば、本書は、災害法制はパッチワーク的で一つの視角からの体系的分析がさしあたりは困難であるとの認識に基づき、①災害類型ごとの分析、②災害の被害が特に大きくなる都市における都市法と災害法の交錯の分析、③災害法総論としての各種の公的・私的主体の情報コミュニケーション過程の分析(避難法制研究)、④国地方関係を含めた災害組織法制研究、という4つの方針に基づいて編集されています。私(土井)は①につき「大規模地震と法」と題して、地震・津波関係法律の規律と原発関係を除く裁判例を災害対応の時系列に沿って概観しています。細かな論点の網羅はもとより不可能ですので、法律を横断してみられる発想や他の法領域にも示唆的な規律の抽出に意を配りました。 

  編者の大橋洋一がはしがきに書くとおり、本書は、災害法の「分野に関心を持たれる読者が「まず最初に手に取るにふさわしい1冊」に仕上がった」ものと思います。災害について専門的に勉強した方からこの分野に興味はあるが何から読めばよいのかとお思いの方まで、広くお手にとっていただければ幸いです。(土井翼)



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