一橋教員の本

研究開発支援の経済学 : エビデンスに基づく政策立案に向けて

研究開発支援の経済学 : エビデンスに基づく政策立案に向けて

岡室博之, 西村淳一著
有斐閣 2022年12月刊行
ISBN : 9784641166097

刊行時著者所属:
岡室博之(経済学研究科)

著者コメント

 本書は日本における研究開発・イノベーションへの公的支援に関するこれまでの実証研究の成果をまとめたものです。共著者の西村淳一氏は一橋大学経済学部・大学院経済学研究科の出身で、私は彼が博士課程院生であった頃から十数年にわたって共同研究を継続してきました。本書は、第1部:研究開発支援の分析枠組み、第2部:産学官連携への支援、第3部:クラスター政策による研究開発支援、第4部:自治体による研究開発支援の4部構成ですが、導入部にあたる書き下ろしの第1部を除く10の章はいずれも、国内外の査読制学術誌に掲載された論文を日本の読者向けに加筆・修正したものです。独自の調査データ、政策データ、企業ミクロデータ、統計個票データ、特許データ、地域データ等を組み合わせ、因果関係を明確に考慮して、それぞれの政策の効果を定量的に示し、より良い政策の策定に向けての知見をまとめました。


 研究開発とイノベーションによる経済成長・活性化は、少子高齢化と地域の経済活力低下の進む日本にとって、ますます重要な政策課題になりつつあります。実証的証拠(エビデンス)に基づいて政策を評価し、より望ましい政策の立案・運用に繋げるというEBPM(Evidence-Based Policy Making)の考え方が着実に広がっていますが、特に研究開発やイノベーションの分野では、世界的に見ても実証研究の蓄積がまだ十分ではありません。また、日本では、政策担当者や支援の実務家が英文で公刊された先端的な学術論文に触れる機会が少なく、研究と実務のギャップが大きいと感じています。本書は実務書ではなく研究書ですが、研究開発・イノベーションの公的支援に関する良質なエビデンスをわかりやすく提供することによって、そのギャップを埋めることに少しでも貢献したいと考えています。(岡室博之)



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