一橋教員の本

剣道の未来 : 人口増加と新たな飛躍のための提案

剣道の未来 : 人口増加と新たな飛躍のための提案

長谷川智, 坂上康博, 木寺英史, 鈴木智也著
左文右武堂 2021年2月刊行
ISBN : 9784991192708

刊行時著者所属:
坂上康博(社会学研究科)

著者コメント

 全国のびのび剣道学校という合宿が縁で、6年ほど前に4人で剣道未来研究会というものを立ち上げ、あれこれ議論してきた。その成果をまとめたものが『剣道の未来』である。当初予定していた出版社が倒産してしまい、結局、執筆者のひとりで、元雑誌『剣道日本』編集部の鈴木智也さんが個人で出版(アマゾンのみで販売)するという形の、まったくの自費出版となった。


 本書の第1章と6章は、この4人による〈座談会〉。第2~5章は、各自がそれぞれ執筆した。ぼくが担当したのは、第3章の「剣道三百年史」である。女性史の視点が弱いことが最大の欠陥だが、これまで考えてきたことや最近発見したことなどを、スペースが許す限り詰めこんで、しかし、読み物として面白いものをめざした。ついつい分量が膨れ上がってしまい、3本準備した番外編の原稿も、写真や図表なども全部カットとなったのは残念だったが、書きたいこと/書くべきことは書けたのでは、と思っている。


 そして剣道史を近世まで遡って描く、という人生初のチャンレンジもどうにかできたかなと思っていた。ところが、今年度のスポーツ演習「剣の文化を学び、創る」という授業でその一部を紹介したところ、いきなり受講していた学生から、『聖教要録』の著者は荻生徂徠ではなく熊沢蕃山です、と間違いを指摘された。両者を混同して記述していたのだ。やっぱり専門外のことに手を出すのは怖い!と思う反面、否、新しい挑戦には失敗はつきものだ、挫けるな!とも思う。


 この失敗談を学外の方に紹介するたびに「さすが一橋、優秀な学生さんですね!」とみんなに驚かれる。そうなのだ。自分はそんな幸せな環境にいるんだと改めて思う。そしてこれは、学生と共に学び、議論するという一橋らしい体験であり、それを定年退職の年にできたことも、これまた幸せだと思う。ちなみに問題の箇所は、第二刷の際に修正してもらった。一橋大学図書館に所蔵されているのはこの修正版である。


 なお、本書の第5章を執筆した長谷川智さん(本業は山伏)は、本学で「古武術」や「東洋的身体技法」などの授業を担当されていて、そこでは第5章で紹介されている「修験道から発想した身心技法」を実際に体験することができる。興味がある方は、ぜひどうぞ。(坂上康博)



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