一橋教員の本

ドイツ文学における哀しみの女たち (NHK こころをよむ)

ドイツ文学における哀しみの女たち (NHK こころをよむ)

久保哲司著 ; 日本放送協会, NHK出版編
NHK出版 2021年10月刊行
ISBN : 9784149110448

刊行時著者所属:
久保哲司(社会学研究科)

著者コメント

 著者は5年前にも「NHK こころをよむ」のシリーズで、『哀しき恋を味わう ドイツ文学のなかの〈ダメ男〉』というテキストを出しました。そこでは、恋愛においてはどんな男性でも悩み苦しみ、〈ダメ男〉になってしまうというお話をしました。今回はそれと対をなすものとして、ドイツ文学における女性登場人物について考えてみました。


 取り上げたのは、肉親の情を大切にし、国の掟に逆らって死ぬアンティゴネー(ソフォクレースとブレヒトの『アンティゴネー』)、愛ゆえに哀れな末路をたどる若い娘グレートヒェン(ゲーテ『ファウスト』)、故郷への憧れと叶わぬ恋情のために心と体を痛めてしまう少女ミニョン(ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』)、イングランド女王エリザベスと対立し、死を受け入れるスコットランド女王メアリ・スチュアート(シラー『メアリ・スチュアート』)、恋を断念し、使命に殉ずるジャンヌ・ダルク(シラー『オルレアンの乙女』)、人間そっくりなので男に惚れ込まれてしまう自動人形オリンピア(E. T. A. ホフマン「砂男」)、悪魔のような美女ジュリエッタ(E. T. A. ホフマン「大晦日の夜の冒険」)、文字通り音楽に命を捧げたアントーニエ(E. T. A. ホフマン「クレスペル顧問官」)、そして、あらゆる男を惹きつける魅力をもつが、最後は殺人鬼の手に掛かってしまう女ルル(ヴェデキント『地霊・パンドラの箱』)です。


 本書は、とかくとっつきにくいと思われているドイツ文学に、音楽の方面から親しんでいただきたいという意図ももっています。したがって、現在耳にすることができるオペラや歌曲などのもとになっている作品を選びました。そうした音楽化について紹介し、さらに作品によっては映画化や漫画化にも触れています。



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