一橋教員の本
憲法演習サブノート210問
宍戸常寿, 曽我部真裕編著 (江藤祥平 [ほか] 執筆) |
著者コメント
本書は、憲法の演習書である。タイトルの通り、210の設問と解説から成り立っており、設問と解説が各々1頁で首尾よくまとめられている。網羅的であり簡潔なそのスタイルは、初学者にはもちろん、すでに憲法を一通り学習済みの学生にとっても、格好の書である。法学部や法科大学院の学生や公務員を目指す学生にとっては、必読の書となること間違いなしである。
もっとも、演習書と言って侮るなかれ、そのクオリティは単なる試験対策のレベルを超えて、実践的意義にまで及んでいる。例えば、「同性愛者と平等(35)」、「文化享受者の知る権利と公立美術館の裁量(85)」、「感染症対策のための入院規制(111)」、「国民投票運動規制(147)」のように、今日社会で大きな注目を集めている話題が取り上げられている。その意味では、これらの問題に関心のある法学部以外の学生や一般の人々にも、是非手にとってもらいたい書である。
同時に、本書は、憲法学が扱う問題が、いかに多様で広がりのあるものかが分かる内容となっている。普段、私たちが報道や新聞で目にする憲法問題は、政治の動きに左右されることから、どうしても単線的になりがちである。しかし、現実の憲法問題は多様であり、その多様さを複眼的に分析することで初めて、最適な解が得られるというものである。その点から言えば、210の設問と解説を提供する本書は、とっかかりとしては絶好の書といえよう。(江藤祥平)