一橋教員の本
室町・戦国時代の法の世界
松園潤一朗編 |
編者コメント
本書は、室町・戦国時代の法についての概説書・入門書です。
他の社会制度・社会規範との区別が不明瞭な前近代日本の法を理解するうえでは、法それ自体を独立的に論じるよりも、法を様々な領域と関係づけ、政治・社会における機能を検証することが重要となります。室町・戦国時代は権力の多元性と固有の社会状況のもと、法の形式や機能などがとくに多様性を持った時代と言えます。
こうした着想のもと、本書は、自律的な諸権力(室町幕府、守護、在地領主、戦国大名、公家、寺社、村、町)の法を扱う第Ⅰ部「諸権力の法」と、社会制度・隣接領域・社会状況(学問、身分、家族、経済、軍事、宗教、災害、慣習)と法の関係を論じる第Ⅱ部「法の諸領域」の二部構成をとり、各分野を専門とする研究者にご寄稿いただきました。
これまで授業を通じて、前近代日本の法を知りたいという受講者向けに個別の時代を対象とした概説書があればと思ってきました。また、一般読者向けに法制史を扱った本が刊行できればと考えました。そこで室町・戦国時代の法を主題に選び、その概要や、法という視点からの研究の広がりと奥行きを伝えられればと思い、企画・編集したものです。
本書を通じて、多くの読者の皆さんが室町・戦国時代の法の世界に分け入っていただけることを願っています。
∗ 電子ブック (Maruzen eBook Library)
『室町・戦国時代の法の世界』(吉川弘文館, 2021年)