一橋教員の本
概説EU環境法
中西優美子著 |
著者コメント
この本は、ドイツのミュンスターにおける在外研究中に執筆しました。コロナ禍で大学も閉鎖され、ロックダウンで知人とも対面で会えず、ゲストハウスにいました。散歩は許可されていましたので、毎日散歩にでかけました。外の空気を吸い、木々を見、鳥の声を聞くことで自然に癒されていたと思います。本書のはしがきに書いていますが、フランス人の哲学者Corine Pelluchonは、映画「もののけ姫」に言及しながら、動物・自然保護の必要性を訴えているのを執筆中にラジオで聞き、宮崎駿監督のジブリ映画をいくつか見ました。映画「もののけ姫」では、自然と人間の関係をあらためて考えさせられました。
EUでは、環境保護に向けて大きな動きが始まっています。欧州委員会は、「欧州グリーン・ディール」を提唱し、それを実現するためにさまざまな政策を打ち出しています。コロナ危機に対して、EU復興基金「次世代EU(NextGenerationEU)」という経済復興措置が決められました。この基金の制度設計の興味深いところは、支援資金の少なくとも37%は環境保護(炭素中立)に割り当てられなければならないとなっていることです。本書第8章では、フランスにおける環境保護に対する新しい動きを紹介しています。第11章では、動物福祉を扱っています。本書の校正中に、気絶なしの儀式的な畜殺の禁止と宗教の自由が問題となったEU司法裁判所の事件において、裁判所は、動物福祉の方を優先させるという画期的な判断を下しました。そこで、急遽、その事件にも触れることにしました。アウトドア派ではないのですが、森林の中を散歩し、野鳥の声を聞くのが好きです(EUにおける野鳥の保護については、第10章)。
自然に感謝の気持ちを込めて。