一橋教員の本

自衛隊加憲論の展開と構造 : その憲法学的分析

自衛隊加憲論の展開と構造 : その憲法学的分析

浦田一郎
日本評論社 2019年12月刊行
ISBN : 9784535524415

刊行時著者所属:
浦田一郎(名誉教授)

著者コメント

 2017年5月3日、安倍晋三自由民主党総裁によって自衛隊加憲論が提起された。そのビデオ・メッセージによれば、自衛隊加憲とは「(日本国憲法)9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を(憲法に)明文で書き込む」ことである。その特徴を一言で言えば、実現可能性を重視した9条改憲論である。

 自民党の正式の改憲案である2012年案では、戦力不保持を規定する9条2項は削除されている。結論として軍事力に対する憲法独自の制約を排除し、全面的に軍事力を解放する自衛戦力論が採られている。この2012年案を維持したまま、自衛隊加憲論が出されている。すなわち、自衛隊加憲論は2012年案の実現を目指す複数段階改憲構想のなかに位置付けられている。そのため自衛隊加憲論自体は自衛戦力論ではなく、軍事力に制約のある自衛力=「自衛のための必要最小限度の実力」論を内容としている可能性が大きい。

 そのような見通しのもとで、本書は「1章 自衛隊加憲論の展開と自衛隊の任務・活動」、「2章 自衛隊加憲論の展開と自衛隊の指揮監督」、「3章 自衛隊加憲論の構造――政府解釈を基礎に」の3章から成り立っている。この構成を通して、自衛隊加憲論を可能な限り具体的、実証的に分析するように努めた。一般書ではなく専門書として書いたので、残念ながら読みやすくはないであろう。しかし本書が、自衛隊加憲論に向き合う場合、考えを整理するために市民、学生、研究者にとって参考になるところがあれば幸いである。



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