一橋教員の本

財務制限条項の実態・影響・役割 : 債務契約における会計情報の活用

財務制限条項の実態・影響・役割

中村亮介, 河内山拓磨
中央経済社 2018年3月刊行
ISBN : 9784502250910

刊行時著者所属:
 河内山拓磨(商学研究科)

著者コメント

 本書は,財務制限条項という融資契約における「約束事」に注目したものです。資金を貸し出す際,銀行などの貸し手は借り手に「してほしいこと」あるいは「してほしくないこと」を明記しますが,なかでも,財務制限条項は借り手が作成・公表する財務諸表などの会計データに基づくもので,「営業利益を赤字にしてはいけない」などがこれに該当します。財務制限条項には,通常,これを破った際の罰(貸出資金の一括返済)が定められていますが,これに違反した事例を調べていくと,その多くで「罰」が猶予されていることが分かりました。それでは,「罰」のない約束事に意味はあるのでしょうか。
 このシンプルな疑問に対する答えを模索するため,本書では,財務制限条項の持つ役割や影響を多角的に検討しました。日本では財務制限条項に関する情報は手作業によって収集する必要があり,その実態を把握することすら困難な状況にありました。一方,諸外国では,財務制限条項は,会計学,コーポレートファイナンス,会社法など様々な研究領域において長らく分析対象とされてきました。財務制限条項は契約の一部分に過ぎず些末なものと思われがちですが,是非,興味のある方は本書を手に取っていただきたく思います。(河内山拓磨)



Share On