一橋教員の本
承認 : 社会哲学と社会政策の対話
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田中拓道編 |
著者コメント
本書は「承認」をキーワードとした一橋大学大学院社会学研究科による共同研究の成果である。
先進国の社会政策は、過去20年のあいだに大きな変化を遂げてきた。雇用、社会保障、教育をめぐる政策は、グローバル化の下で、経済的な競争政策へとますます従属するようになっている。その一方で、若者や女性のワーキングプア、長期失業者、自立困難な障害者、独居の高齢者、移民や在日外国人など、さまざま人びとのあいだで「排除」が顕在化している。
これまでの社会政策の理念は、今日の状況にうまく対応できていない。平等な人権論、階級論、あるいはナショナルな単位を前提にした市民権(シティズンシップ)論だけでは、今日の多様なかたちの排除に対抗する理念や実践として十分とは言いがたい。
本書は、「承認」をキーワードとして、新しい社会状況に対応する社会政策のパラダイムを構想し、その一貫した政策への応用を試みたものである。承認論によれば、尊厳や人格的承認の毀損という個々人の感情こそが、社会的不公正を訴える出発点とみなされる。本書では、社会哲学における承認論の最先端の研究動向を検討するとともに、社会政策、教育学、障害者福祉、ジェンダー論、多文化主義論、政治学を横断する政策体系を構築しようと試みている。