一橋教員の本
ジェンダーにおける「承認」と「再分配」 : 格差、文化、イスラーム
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越智博美, 河野真太郎編著 |
著者コメント
一橋大学でのリレー講義、「ジェンダーから世界を読む」の書籍化シリーズ最新版です。
今回は「承認」と「再分配」をテーマにしています。今、たとえば女性が自分の名義でクレジットカードを持てるのも、夫婦で家を買って共同名義にできるのも、男女雇用機会均等法ができ女の仕事がお茶くみコピー取りに限定されないものになったのも、第二次世界大戦後のフェミニズムの運動によるものです。こうした運動はさまざまな市民の運動へと波及し、いろいろなマイノリティの権利の承認にも向かっていきました。ところがそこで起こったのは、その権利が市場への消費者の参入に還元して語られるようになったということです。結果として現在、経済格差問題、すなわち富の再分配の問題が見えづらくなっています。知らないうちに日本の貧困率は世界でも目立って上位にある状態になっています。
どのようなからくりで、わたしたちにはそのような状況が見え辛いのか、またその問題は何か、打開するにはどうしたらよいのか、またその見え辛さとその打開にわたしたちの想像力は
どのように関与しうるのか。これらの問題を、まずは紹介し、文化事象についてイスラームの
問題まで含めて多角的に考えているのが本書です。当時講義に出ていなかった人たちにも、本書の問題意識が自分たちとは無縁の問題ではないものとして手にとっていただけると幸いです。