一橋教員の本
語形から意味へ
三枝令子著 |
著者コメント
日本語の「だ」というのは、おおざっぱに英語のbe動詞に当たるものと考えられています。“I am a student.”と「僕は学生だ」の場合には確かにそれが当てはまります。しかし、話し言葉を考えてみると、「もうだめだ!」「へーん、だ」といったbe動詞とは呼べない用法もたくさんあります。そして男性女性とも発話が可能な表現と、「礼だ、礼をしろ」とか「A:どんな人?―B:若い女性だ」のように女性が使いにくい表現もあります。日本語の「だ」にはbe動詞のように主語と述部を結び付けるだけではない働きのあることがわかります。
「昨日先生を研究室に訪ねたが、お留守だった。」の「が」は逆接と呼ばれています。しかし、「が」「けど」の語形に注目すると、「すみませんが、・・・」「パイナップルどう? 今届いたばっかなんだけど」のような逆接とは呼べない用法もあります。
語形の共通性に着目して言葉を見ていくと、意味のつながりと広がり、そして言葉の体系といったものが見えてきます。そうしたことに興味がおありでしたら、ぜひ読んでみてください。