一橋教員の本
Elektrifizierung als Urbanisierungsprozess : Frankfurt am Main 1886–1933(Beiträge zur hessischen Wirtschaftsgeschichte ; 9)
森宜人著 |
著者コメント
本書は、都市化と電力という切り口から、19世紀末~世界恐慌期ドイツの都市社会の変動を、フランクフルト=アム=マインの事例に即して辿った研究です。高度工業化の産物である電力の広範な活用が都市社会にどのような影響を及ぼしたのかという関心を出発点に、そもそも19世紀の人びとは電力の導入にどのような未来像を抱いていたのかを初めとして、電動機の普及による手工業者の救済政策、都市交通の整備と都市計画の展開、周辺自治体との合併をめぐる関係性、都市財政における電力業、電力業の自律性をめぐる都市自治体と広域発電企業の対立、電力の必需化に伴う生活環境の変化など、近現代都市史上の諸論点を実証的に分析しました。
一橋大学のヨーロッパ史研究においては地域史研究の手法が方法論的特徴となってきましたが、本書もそうした伝統から有形・無形の影響を受けています。また、地域史研究の本場ドイツでは、各州や各都市の図書館や公文書館が史料の保存だけでなく、当該地域の歴史に関する研究叢書や学術誌の刊行を通じて地域史研究を支えてきましたが、本書の出版を引き受けてくれたHessisches Wirtschaftsarchiv(ヘッセン経済公文書館)もそうした組織の一つです。本書が、都市史あるいは地域史の専門研究への関心を高める契機となり得れば幸いです。