一橋教員の本

少年に対する刑事処分

少年に対する刑事処分

本庄武
現代人文社 2014年3月刊行
ISBN : 978-4-87798-577-6

刊行時著者所属:
 本庄武(法学研究科)

著者コメント

 本書は、刑事裁判所で少年に予定されている処分選択のあり方を検討したものである。少年法は保護主義を採用しており、罪を犯した者でも家庭裁判所で保護の対象とするのを原則としている。しかし同時に、少年法は、一定の場合について検察官を通じて刑事裁判所に少年を起訴することをも予定している。その場合、刑事裁判所としては、少年を保護のために再度家庭裁判所に戻すか、少年に刑事処分を科すかという選択を迫られ、また刑事処分を科すとした場合は、軽い刑で済ませるか、不定期刑とするか、重い定期刑やさらに重い死刑や無期刑を科すかを選択しなければならない。そうした処分選択の場面で、少年法の理念がどう作用し、成人に対して刑が量定される場合とどのように異なってくるのかが問題である。
 今日、刑事裁判所で少年に対する処分選択が深刻に争われる事件は非常に少数であり、本書のテーマは、少年法全体からすると極めてマイナーな部類に属する。しかし、少年の問題は、何のために刑事罰を科すのかという根源的な問題を考える上では格好の素材であるとともに、社会的な注目を集めやすい問題でもある。本書が、従来必ずしも検討が十分でなかったこの領域について、検討が深化するための一助となれば幸いである。



Share On