一橋教員の本

適合性原則と私法理論の交錯

カバー画像:適合性原則と私法理論の交錯

角田美穂子
商事法務 2014年2月刊行
ISBN : 978-4-7857-2155-8 本体価格8,200円+税

刊行時著者所属:
 角田美穂子(法学研究科教授)

著者コメント

 本書がテーマとする適合性原則とは、顧客の属性(知識・経験・財産状態、契約の目的)に適合しない商品・サービスを勧誘してはならないとのルールである。アメリカの証券取引の領域における自主規制や行政監督ルールに起源を有するこの投資家保護ルールは、今日、金融サービスの領域におけるグローバル・スタンダードとなっている。わが国においても適合性原則は、金融サービスの領域における勧誘・販売ルールの中核をなし、金融危機を経て一層の重要性を獲得しつつあるが、同時に、消費者法や民法(債権関係)改正における適合性原則の要請の部分的な実現、更には消費者契約法への導入が論じられるなど、投資家保護の領域を超えて消費者保護のルールへと変貌も遂げつつある。このような発展は、他国に例をみないわが国特有のものである。
 本書は、このような複合的な発展を遂げつつある適合性原則について、ドイツ法の比較法的検討、それも19世紀末から近時の金融危機後の規制改革まで120年余りにわたる法発展を追いながら、投資家保護と消費者保護の交錯に光を当て、個人の権利救済を実現する民事ルールとしての「適合性原則」の可能性を問うものである。
 なお、刊行にあたっては、平成25年度一橋大学大学院法学研究科研究選書の助成を受けた。記して感謝申し上げる。



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