一橋教員の本
創設期の厚生経済学と福祉国家
西沢保, 小峯敦編著 |
著者コメント
本書は、科学研究費による国際共同研究の成果であり、ケンブリッジ学派の厚生経済学・福祉国家観をオックスフォード派のそれと対比している。
創設期の厚生経済学は、通常、功利主義に基づくピグーの厚生経済学で語られるが、本書では、ロビンズ以前の厚生経済学・福祉の経済学の多元性・豊饒性を明らかにし、ピグーの厚生経済学についても周到な再検討を加えている。
新古典派経済学が展開するケンブリッジと対照的に、オックスフォードではT.H.グリーンやラスキンの理想主義を背景にホブソンの「もう一つの厚生経済学・福祉の経済学」が生まれ、自由党政権下で福祉国家の基礎が形成された。オックスフォード派を取り入れて、ケンブリッジ学派を再考し、厚生経済学を歴史的に再検討する際のステップにしたい。