一橋教員の本

日本の学校受容 : 教育制度の社会史

日本の学校受容 : 教育制度の社会史

日本の学校受容 : 教育制度の社会史

木村元編著
勁草書房 2012年3月刊行
ISBN : 978-4-326-25076-9 本体4,300円+税
刊行時著者所属:木村元(一橋大学大学院社会学研究科教授)

著者コメント

こんにち、学校に行くことが自明のことになるなかで、不登校者が増え、改めて就学することの意味が問われている。そもそも就学は日本の社会にどのように定着してきたのか。

本書では法制的な宣言や文部統計での就学率をそのまま学校受容の指標にしてはいない。学校を卒業し、「行け」といわれるわけではないのにその後も学校に通い続ける時期に至って学校の社会への定着と見ている。としてみると、それは1930年代まで待たねばならないというのが本書の立場である。本書の課題は、この時期の日本の学校と教育の検討を踏まえてこんにちの就学を支える構造を考えること、なかでも就学が自明となる時期に学校の制度がどのように「生きられた」かを検討することである。「生きられた」というのは制度にそのまま従属するのでもなく、制度から自由というものでもない、いわば折り合いをつけて学校という制度をなり立たせていた状況を表している。学校を成立させる関係のコアには「教える」という行為があるが、文化の伝達はなにも「教える」という行為だけでなされるものではない。これに対して学校はあえて「教える」ということを組織化した時空間を作り上げた制度であるといっていい。本書では、こうした学校のコアに位置する制度化された「教える」ことの変容に焦点を当て、そのうえでどのようにして学校が成立していたのかについてその存立の基盤に検討を加えたものである。



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