一橋教員の本

「多言語社会」という幻想

 
「多言語社会」という幻想  

「多言語社会」という幻想

 安田敏朗
三元社   2011年4月刊行
ISBN : 9784883032914    本体2,400円+税
 刊行時著者所属 : 安田敏朗(一橋大学大学院言語社会研究科)

著者コメント

 日本は「多言語社会」だ、という話をきくことが多いかもしれません。あるいはそのようなことを考えたこともないかもしれませんが、ここ20年ばかりのあいだに、外国籍人口は急増しておりこうした事態をふまえて、移民国家論や、多言語多文化社会、共生社会論などが近年活発に論じられています。しかしながら、歴史的にふりかえれば、日本は多言語・多民族社会を構成していましたが、そのあり方は、現在からみればかなり歪んだものでありました。近年の多言語社会論は、こうした歴史的経緯をふまえたうえでなされているものでは決してなく、それゆえの問題も生じてきています。多言語性のない社会などなく、多言語性の解釈によって、さまざまな政策がとられてきたにすぎない、というのが本書の認識です。この認識にたって、さまざまな問題を論じた論文をあつめて一冊にしました。興味のある章から読んでいただければと思います。なお、校正が終わってから東日本大震災がありました。震災後、総理が「日本国民」に向けてメッセージを発しました。また「がんばろうニッポン」と叫ばれていますが、そのなかに、「多言語社会日本」を構成するすべての人が含まれていたのでしょうか。そんな現在的な問題にも目を向けるきっかけになれば、幸いです。



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