一橋教員の本

戦争の記憶 記憶の戦争 : 韓国人のベトナム戦争

 
戦争の記憶 記憶の戦争 : 韓国人のベトナム戦争  

戦争の記憶 記憶の戦争 : 韓国人のベトナム戦争

 金賢娥著 ; 安田敏朗
三元社   2009年11月刊行
ISBN : 9784883032556    本体2,700円+税
 刊行時訳者所属 : 安田敏朗(一橋大学大学院言語社会研究科)

訳者コメント

 ベトナム戦争に延べ三〇万人の韓国軍が派兵され、五千人余の死者、一万人の負傷者、枯葉剤後遺症被害者数万人が生じたことは、日本ではあまり知られていないと思います。この本は、戦場の狂気というべきか、アメリカ軍がおこなったのと同様の「民間人虐殺」を韓国軍もおこなっていた、という「事実」を聞き知った韓国人の著者が、自身の主宰する市民団体の活動としてベトナムの現地を訪れ、実際に何がおこなわれたのかを、彼女自身が忘却していたベトナム戦争の記憶と向き合いつつ、聞き取り調査した記録です。単なる記録ではなく、著者自身の人生での葛藤や、韓国社会のもつ問題点などがからまりあいながら叙述がなされていくので、評価は分かれるかとは思いますが、誰かを一方的に追いつめて責めあげるような姿勢ではなく、知らなかったことを素直に認めて被害者に寄り添っていこうという姿勢には共感できるのではないでしょうか。不毛なナショナリズム論争に陥ることのない議論がこの訳書を通じてなされたら、訳者冥利に尽きます。



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