一橋教員の本
沖縄イメージを旅する : 柳田國男から移住ブームまで
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沖縄イメージを旅する : 柳田國男から移住ブームまで |
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多田治著 中央公論新社 2008年8月刊行 ISBN:9784121502872 本体880円+税 | ||
刊行時著者所属:多田治(一橋大学大学院社会学研究科) |
著者コメント
青い空、透きとおった海。さんさんと照りつける強い日差しと、真っ白な砂浜。心地よく吹く風、穏やかに聴こえてくる三線の音。赤瓦の屋根の家々、それらを囲む石垣、赤いハイビスカス。ゴーヤーチャンプルーと泡盛を味わって、島唄を聴いては癒される……。
タイトルにもある「沖縄イメージ」という言葉は、「沖縄の見られ方」くらいの意味である。多くの人にとって、沖縄にはいま挙げたような、癒しのリゾートのイメージが強い。しかし、同時にここは、基地と戦争の現実を色濃く残した島でもあるのだ。
沖縄観光には長い歴史がある。いまほどの規模ではないにせよ、日本における沖縄への熱い視線そのものは、古くは大正時代の頃からあった。日本人はこれまで幾度となく沖縄を熱烈に求めては、自分を映しだす鏡にもしてきた。それはなぜなのだろうか。
本書では、戦前に沖縄を研究した柳田國男から、今日のNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」や移住ブームにいたるまで、100年に及ぶ沖縄イメージの流れをたどってみたい。
日本における「沖縄の見られ方」をさぐっていくことで、沖縄と日本の濃密な歴史が浮き彫りになり、より深く沖縄を味わうことができるはずである。そんな歴史の厚みを感じられる、ガイドブックと研究書のあいだのような本を書いてみたいと思った。
本書は、1.沖縄へのツーリスト、沖縄フリークのみなさん。2.移住者を含め、沖縄で生活しておられるみなさん。3.沖縄に関する専門的な知識を求める、沖縄研究を志向するみなさん。いずれの方をも読者に想定し、楽しんでいただけるよう、非力ながら心がけてみた。いずれにせよ、沖縄が大好きな人たちに読んでいただきたいことは、言うまでもない。
さらに、沖縄に一度は行ってみたい方、少しでもご関心をお持ちの方。観光業をはじめ、沖縄に関わる仕事をされている方。また、沖縄という地に限らず、観光や地域振興、イメージなど、他の地域や国に応用できる視点も含んでいると思うので、各地で課題に取り組んでおられる方にも、ご活用いただければ幸いである。(多田治)