一橋教員の本

狂気と権力:フーコーの精神医学批判

 
狂気と権力 

狂気と権力 : フーコーの精神医学批判

 佐々木滋子
水声社   2007年6月刊行
ISBN:9784891766245   本体3,500円+税
 著者紹介:佐々木滋子

著者コメント

1973・74年度のコレージュ・ド・フランスにおける講義『精神医学の権力』と『異常者たち』で、ミシェル・フーコーは、18世紀末ー19世紀初頭に成立した≪精神医学≫が、≪狂気≫を突破口にして、どのように≪公衆衛生の科学≫としてその権力を拡張していったかを、詳細かつ実証的に、しかもスリリングに論証しました。精神医学は、精神病院内部では、医学的治療の名目の下で、医師ー患者間の権力関係を通して、狂人=社会的逸脱者を規律化して、従順な労働力として社会に復帰させようとします(したがって治療の場は現実には、医師と患者の間の熾烈な権力闘争の場に他なりません)、他方精神病院の外では、犯罪・性・痴愚性という本来的には≪狂気≫とは無縁の領域を次々に植民地化しながら、新たな病理的カテゴリーを創出して、最終的に≪変質≫概念として結実する≪異常性≫を作り出していきます。19世紀全体を通して精神医学がたどったこの「歴史」は、今日の私達の社会にも、大きな影を落としつづけています。本書は、このフーコーのこの二つの講義を、できる限り平明かつ明快に読み解こうとしたものです。
上記のように、フーコーは精神医学に対しては、厳しい断罪の姿勢をもって臨んでいますが、精神分析に対しては、反対に曖昧といってもいい態度ーー時には賞賛、時には断罪ーーを示しています。フーコーの「精神医学批判」を取り上げる以上は、精神分析に対する立場も明確にする必要があるという考えから、その問題を中心に論じた≪フーコーと精神分析≫を付論として併録しています。
本書を通して多くの方に、フーコーの権力論のラディカルな面白さを知って戴けたら、そして直接フーコーの著作にも手を伸ばして戴けたら、と願っています。(佐々木滋子)



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