一橋教員の本

原爆体験 : 六七四四人・死と生の証言 

 
原爆体験 

原爆体験 : 六七四四人・死と生の証言

 濱谷正晴
岩波書店   2005年6月刊行
ISBN:4000227424   本体2,800円+税
 著者紹介

著者コメント

いまから20年あまりも前のこと。被爆40年を期して、全国47都道府県に居住する原爆被害者を対象に、日本政府による原爆・戦争犠牲「受忍」政策をくつがえそうと、大規模な調査活動が被爆者自身の手で遂行されました。本書は、「原爆被害者調査」と銘打つその調査票に記された、“人類史的遺産”ともいうべき膨大な証言にもとづいて、書かれたものです。書き上げるのに20年、かかりました。
執筆したのは濱谷ですが、この作品は、一橋大学〈原爆と人間〉研究会の存在なくして生まれませんでした。通称〈原人会〉は、石田忠名誉教授を中心に、本学元職員の奥田妙子さん・沼保宏さん、社会調査室元助手の栗原淑江さん、現助手の有冨由紀さん、並びに濱谷の6人をコア・メンバーとし、多いときには30数名からなる会員(助手及び職員)が、調査データの整理・集計・分析作業を物心両面からバックアップしてくれました。このような会が本学に生まれた。そのことを私たちは誇りにしています。
原人会はこの間、調査票に記された『「あの日」の証言』の全文データベース化にとりくむとともに、被爆者における原爆体験の思想化の営みの人間的必然性を統計的に解き明かす作業にいどみ、その成果を『統計集「原爆体験の思想化」: 日本被団協「原爆被害者調査1985」分析 / 一橋大学「原爆と人間」研究会編 ; 石田忠著』(全8巻)に集大成しました。後者は限定35セットですが、そのうち25セットは、石田ゼミナール卒業生の会(沓石会)で先生の米寿のお祝い金を拠出しあい、広島・長崎のみならず各地の関係資料館や国会・大学図書館、被爆者問題に関心のある研究者に贈呈しました。
質的方法と量的方法を統合する私たちのこのような試みを、大江健三郎さんは、原爆体験の全体像にせまる「新しい仕方」として評価してくださっています(『「伝える言葉」プラス』朝日新聞社、2006年)。



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