一橋教員の本
福祉国家の基礎理論 : グローバル化時代の国家のゆくえ
田中拓道著 |
著者コメント
政治思想史を専門としていた筆者が現代の福祉国家論に取り組むようになったのは、2000年前後のことである。…この時期は先進諸国の福祉国家が大きく変容する曲がり角と重なっていた。福祉を「人的資本」への「投資」ととらえる見方が広がり、各国の改革方向には一種の収斂が見られるようになっていった。福祉国家研究も、こうした方向性を前提としたうえで、改革の遅速、政策の効果などを検証するものが増えていった。
新しい研究動向を追うなかで、違和感が膨らんでいった。現在の変化の意味を理解し、将来の選択肢を明らかにするためには、「福祉国家とは何か」という問いを徹底して突き詰める必要があるのではないか。そのためには「資本主義とは何か」、「国家とは何か」、「福祉国家の変容をもたらす力とは何か」という問いと自分なりに取り組む必要があるのではないか、と考えるようになった。
本書はこうした問題意識のもとに、2000年代後半から15年ほどのあいだに考えてきたことを一冊の本にまとめたものである。(「あとがき」より)