一橋教員の本

Contrived Laissez-Faireism : the politico-economic structure of British colonialism in Hong Kong

Contrived Laissez-Faireism : the politico-economic structure of British colonialism in Hong Kong

Fujio Mizuoka
Springer 2018刊行
ISBN : 9783319697925

刊行時著者所属:
水岡不二雄(名誉教授)

著者コメント

 1997年の満期まで、アジア、アフリカ各地で植民地が独立した戦後に入っても半世紀にわたり続いた香港の英国植民地統治は、白人少数者権力による有色人(中国人)多数者の支配であったが、同種の社会構造を持っていた南アフリカ共和国とことなり、その植民地支配が国際的に問題にされることはほとんどなかった。他方、香港では、世界的にネオリベラリズムが卓越する以前から「自由放任」が特徴的な経済原理とされていた。本書は、自由放任と白人少数者支配という、香港という場所の特質である2つの政治経済機構がどのように結びついているのか、さらに、香港を支配した英国人は、満期まで統治を貫徹するため、自由放任とは全く異なるように見える建造環境生産をいかに行なってきたのかについて、「contrived laissez-faireism」という概念をもちいて、解析したものである。この概念は、英国人支配者は、自由競争を生み出す根源である資源の稀少性を人為的に作り出し、有色人を競争に駆り立てることによって闘う相手を植民地支配者ではなく民族同胞にむけさせた、と考える。具体的に本書が取り上げた実例は、移民政策、スクォッター定住政策、土地政策、工業化政策、地下鉄建設、教育政策の6つの分野であり、公刊されていない香港植民地政庁の内部資料なども駆使して、この概念の有効性を立証した。



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