一橋教員の本

幸福とは何か : 思考実験で学ぶ倫理学入門(ちくまプリマー新書 ; 308)

幸福とは何か : 思考実験で学ぶ倫理学入門

森村進
筑摩書房 2018年9月刊行
ISBN : 9784480683298

刊行時著者所属:
 森村進(法学研究科)

著者コメント

 私は『法哲学』の講義の中でたいてい2,3回にわたって幸福(≒福利≒効用)について話している。というのは、「最大多数の最大幸福」を道徳の究極的目的とする功利主義を説明する際、そこでいう「幸福」とは何かを明らかにする必要があるし、功利主義以外の道徳理論も程度の差はあれ幸福を無視できないからだ。
 だがこの問題について最近の英語圏の哲学界で活発な議論がなされているのに、日本ではそれを紹介する本が一冊も出版されてこなかった。人生論的な幸福論は読み切れないほど出版されているが、幸福という観念に関するさまざまな理解を整理・検討した書物はなかった。
 そこで私はこのテーマについて自分で入門書を書くことにした。またその際、幸福をめぐる議論の紹介を通じて哲学や倫理学の議論と思考の方法を学んでもらおうという欲張った目標も立てた。
 その結果書き上げたのが本書である。本書は「ちくまプリマー新書」というヤングアダルト向けの新書の一冊なので、基本的に十代後半の読者を念頭に置いてなるべく平明に書いたつもりだが、二十代以上の読者にも十分読みごたえがあるだろう。特に法哲学の講義の受講者や倫理学に関心のある人に読んでもらえることを希望している。



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