一橋教員の本

終わらないフェミニズム : 「働く」女たちの言葉と欲望‎

‎終わらないフェミニズム : 「働く」女たちの言葉と欲望‎

日本ヴァージニア・ウルフ協会, 河野真太郎, 麻生えりか, 秦邦生, 松永典子編
研究社  2016年9月刊行
ISBN : 9784327472337

刊行時著者所属:
 河野真太郎(商学研究科)

著者コメント

 本書は、20世紀前半のイギリスの、いわゆるモダニズム文学を代表する作家であるヴァージニア・ウルフを研究する学会、日本ヴァージニア・ウルフ協会による論集です。ヴァージニア・ウルフはモダニズム作家としてだけではなく、『私ひとりの部屋』や『三ギニー』といったエッセイによって、フェミニストとして著名であり、20世紀の英語圏におけるフェミニズム文学研究の中心には常にウルフがいたと言っても過言ではありません。
 しかしそのフェミニズムの現状とはどのようなものでしょうか。本書ではとりわけ、第二波フェミニズム以降(おおまかには1990年代以降)を「ポストフェミニズム」と名づけ、フェミニズムの現状を再検討します。ポストフェミニズムにおいては、第二波フェミニズムや「ウーマン・リブ」における女性解放への衝動が、資本主義への取り込みを受けた部分があります。つまり、女性の解放が会社におけるキャリア形成へと限定されるような状況です。それが正しいとするなら、新たなフェミニズムは改めて「労働」と「連帯」を問題とするものにならなければなりません。その労働とは賃金労働だけではなく、再生産労働やケア労働も含めた広い意味での労働であり、その労働のあり方によって分断をこうむった女性同士の連帯を、いかにして再検討できるのか。
 本書はそのような現在的な視点から、ウルフを含む20世紀の文学作品や映画作品を逆照射し、新たな読みを提示する試みです。ウルフ研究者やイギリス文学・文化の研究者のみならず、広くフェミニズムに関心を持つみなさんに手にとっていただければと思います。



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