一橋教員の本

漢字廃止の思想史

‎漢字廃止の思想史

安田敏朗
平凡社  2016年4月刊行
ISBN : 9784582833126

刊行時著者所属:
 安田敏朗(言語社会研究科)

著者コメント

 「漢字廃止論」なんていまや意味をなさないのではないか、と思うのが普通です。たしかにそうかもしれません。しかし、明治以降、漢字廃止論(あるいは制限論)は、一定程度の説得力をもって存在しつづけてきました。いま現在意味がない(と思われる)からといって、ばっさり切りすてるのは何とも味気がありません。本書では、漢字廃止論が意味をもっていた時期、それぞれどういった根拠でとなえられてきたのか、をやや詳しく検討しました。カナモジ論が中心的な話題になりますが、文明化、効率化、マルクス主義、民主主義などなど、その時その時の先端的な思想に乗っかる形で漢字廃止論が展開されてきました。もちろん大きな反発もあり、「思想戦」とでも形容できるような事態も生じました。そこでなされてきた議論をふりかえり、その延長線上で、漢字廃止あるいは制限がもつ現代的意味も考えてみたいと思います。何気なくパソコンのキーボードをたたいて日本語の文章をつづっているわけですが、それほど漢字は近しいものなのでしょうか。日本語の表記のあり方を考えてみるきっかけになれば、幸いです。



Share On