一橋教員の本

非常時対応の社会科学: 法学と経済学の共同の試み

非常時対応の社会科学: 法学と経済学の共同の試み

齊藤誠, 野田博
有斐閣  2016年3月刊行
ISBN : 9784641164710

刊行時著者所属:
 齊藤誠(経済学研究科),野田博(法学研究科)

著者コメント

 『非常時対応の社会科学:法学と経済学の共同の試み』と題した本書は,日本学術振興会の「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」(以下,課題設定事業と略)において,課題設定事業委員会が提案した研究テーマである「非常時における適切な対応を可能とする社会システムの在り方に関する社会科学的研究」に関して,2013年度から2015年度にかけて取り組んできた研究の成果を取りまとめたものです。
 課題設定事業においては,(1) 学際的な研究プロジェクトであることと,(2) 研究者と実務家が有機的に結び付いた研究フォーラムであることが求められました。(1)については,一橋大学の法学研究科と経済学研究科の研究者が中心となって,研究プロジェクトのメンバーを構成しました。一方,(2)について法学班では,非常時対応の法実務に精通した弁護士の方々の協力を仰ぐとともに,経済学班では,行政実務経験が豊富な研究者を中核メンバーとしました。
 本書では,非常時対応のトピックスについて,以下の5部構成によって多角的に考察しています。

 第1部 自然災害からの復興─行政的な視点
 第2部 非常時における民間の行動規範─福島 第一原子力発電所事故を事例として
 第3部 事前的なリスク対応─金融危機と財政危機 
 第4部 事後的な損失負担─原子力損害賠償をめぐって
 第5部 危機対応と財政制約

 本書の終章では,上の5つの部で展開された議論を踏まえて,非常時における裁量と規範に関する若干の考察を行っています。なお,第1部の内容については,2015年9月4日に仙台市で実施した公開シンポジウム「非常時における行政対応」でも報告いたしました。大変にありがたいことに公開シンポジウムには,150人を超える方々に来ていただきました。
 本研究プロジェクトを引き受けることになった2年前,本当にプロジェクトを完遂することができるのかどうか,私たちにはまったく自信がありませんでした。同じキャンパスにいながら日頃は話す機会など滅多になかった経済学研究者と法学研究者が集った合同研究会は,当初,竜馬不在の薩長会合のように静まり返っていました。しかし,季節の和菓子の話題から研究会を始めることが恒例になってからは,メンバーどうしが次第に打ち解けていった結果,合同研究会の議論も徐々に活発となりました。
 こうして本書を公刊することができました。今は、その安堵と緊張とが入りまじった気持でおります。そして、あらためて,多くの人々に対して深く感謝するばかりです。本当にありがとうございました。



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