一橋教員の本

村上春樹とポストモダン・ジャパン

村上春樹とポストモダン・ジャパン

三浦玲一
彩流社 2014年3月刊行
ISBN : 978-4-7791-2005-3

刊行時著者所属:
 三浦玲一(言語社会研究科)

著者コメント

 本書の著者、言語社会研究科元教授の三浦玲一先生は、2013年10月9日に病のため還らぬ人となってしまいました。本書はその三浦先生が、病に冒されながらすべてを絞り出すかのようにして書いた絶筆となります。本書には、晩年の三浦先生の問題意識がすべてつまっていると言って過言ではないでしょう。それを一言で述べれば、文化と文学を論じるにあたって、グローバリズムとネオリベラリズムを批判的に問題化しながら論じなければならない、という問題意識です。これは、村上春樹なら村上春樹という作家とその作品をグローバリズムやネオリベラリズムという政治性・歴史性に「還元」することではありません。本書で論じられる村上春樹は、還元するまでもなく「グルーバル化の文化」そのものなのであり、そのグローバル化の文化は同時に「わたしたちの文化」でもある--そのような問題意識に本書は貫かれています。本書で村上と併置して論じられるカズオ・イシグロ、宮崎駿、ハリウッドのディザスター映画、そして三浦先生が本来の専門とするアメリカ文学のさまざまな作家たちについても同じことが言えます。そして本書はその結論において、そのグローバル化の文化、わたしたちの文化とは異なる、オルタナティヴな文化への呼びかけを行います。この呼びかけは残されたわたしたちへの呼びかけです。三浦先生の生涯の仕事は決して完結はしませんでした。それはわたしたちによって継続されるのです。(紹介文代筆:商学研究科准教授 河野真太郎)



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