一橋教員の本
出光興産の自己革新
橘川武郎, 島本実, 鈴木健嗣, 坪山雄樹, 平野創著 |
著者コメント
この本は出光興産を題材に、同社の財務危機からの回復のプロセスを分析した経営学研究書です。出光興産は出光佐三(いでみつ・さぞう)の独自の経営で知られる非上場の大石油企業でしたが、佐三逝去後、90年代にはバブル期の過剰投資によって深刻な財務危機に陥りました。同社は非上場企業のため、当時の金融ビッグバンの中で資金調達に不安を抱えることとなり、一時は倒産寸前かとまで報じられました。そうした中で天坊昭彦は同社の有能なミドルを集めて負債返却プランを推し進め、創業家を説得し、ついに2006年にはそれまでタブーとされた上場を実現させました。出光が財務危機から回復し、新たな方向に経営の舵を切っていくプロセスはいかなるものだったのでしょうか。
本書は文部科学省のGCOE(グローバル・センター・オブ・エクセレンス)の支援を受け、出光興産の協力の下、延べ70名を超える関係者への聞き取りに基づいた研究成果をまとめたものです。日々組織の問題に悩むビジネスパーソンや、大企業内部の経営の実際を、理論や歴史をふまえて理解したい学生諸君にぜひ読んでいただきたいと思います。